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〈41〉 ページ41

『好きです。中也さんのことが。』


そう言った。


あの涙が嬉しさから来たものだと言った。


俺のことが好きだと?


それを願っていたはずなンだが・・・実際言われると、こンな気持ちになるンだな。


そンなこと知るわけもないAは困った顔してやがる。


抱き締めたい衝動に駆られて、そンな自分へ溜め息を洩らし、そのまま腕の中に収めた。


固まっているAは収まりが丁度良く、つい力が入っちまう。


温っけぇ。


だが、今、頭に過ったのは太宰の木偶。


彼奴はAのことが好きだ。


それは知っていたし、答えも今出た。


だが、接吻したのは許せねぇな。


急に腹が立ってきた。


少し離れてAの顔を見れば、顔は真っ赤で目が泳いでいる。


照れと恥ずかしさか。


俺が目をやったのは、艶やかしい唇。


太宰の奴が奪いやがった。


そう思った時には自分のものを重ねた。


何度も何度も、啄むように。


うっすら目を開けば、赤い顔のまま目を閉じているA。


なンだか満たされた気になる。


どれも初めて感じる物だ。


暫くして離れれば、下を向いたままのAから小さな声が聞こえた。


『あ、あの・・・。』


あぁ、そうか。


どうしたらいいのか分からないンだろう。


「俺のもンだな。」


笑ってそう言えば、目を見開いた後、満面の笑みで


『これが両想いってやつなんですね。』


何て言いやがるから、何故か顔が熱くなった。


すると急に視線を何処かへ向けた。


『すみません、そろそろ太宰さんが出勤してくる時間なので失礼します。』


仕事をきちんとこなす奴だ。


上司が来る前に執務室に行くのは当然だ。


だが・・・行かせたくねぇな。


俺も仕事は真面目にやる。


だから止めることなンて出来ねぇ。


「太宰には言ったのか。」


取り合えず気になったことは聞いておく。


『中也さんに一番に伝えたかったので、太宰さんにはこれからです。』


一番、その言葉に喜ぶなンて俺ってそンなだったのか。


もう一度抱き締めて


「太宰の奴に何かされたら言えよ。ぶっ飛ばす。」


『ふふ、大丈夫ですよ。・・・ありがとうございます。』


離れて


『では。』


頭を下げて出ていく背中に声を掛けた。


「今日は俺が迎えに行く。」


一度振り返ったAはにっこり笑って赤い顔のまま扉を閉めた。

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作者名:tukimiyayuzuki | 作成日時:2017年8月23日 13時

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