【文スト】●益者三友●【双黒・中也】 (ページ37)

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そっと離れてくれた太宰さんから逃げるように部屋を後にした。

恐らく、私に逃げ道を作ってくれたんだと思う。

そうじゃなければ太宰さんから逃げるなんて出来ることはない。

平静を装うよう努力する。

この後は中也さんとの約束がある。

さっきでさえ何時もと違うとバレていた。

執務室へ着いた。

しっかりしろ、私。

『失礼します。』

「入れ。」

中には帰り支度を終えた中也さんが居た。

何時も通りのことなのに、現実に戻れたように落ち着く光景だと思ってしまった。

「・・・さっさと行くぞ。」

凄く見られた気がしたが気のせいだろうか。

慌てて何時も通り並んで歩く。

材料はあるらしく、真っ直ぐマンションへ直帰した。

手際良く作って下さり、美味しく頂いた。

「姐さんから貰ったチョコがある。食うか？」

『頂きます！』

甘い物は好きだ。

こんな時にチョコとは救世主だ。

ほんのり甘い独特の・・・

『っ！苦い・・・です。』

「あ？ンなわけあるかよ。」

いや、本当に・・・これはもしかして・・・しかも何か強いやつだ。

仕方無さそうにチョコを口に入れる中也さん。

甘い物は好きではない中也さんにチョコとはそういうことか。

「あー・・・こりゃウイスキーだな。」

『やっぱりお酒でしたか。』

顔も頭も熱い。

「悪かった。食って無かったから知らずに渡した。」

本当に申し訳なさそうにするので、此方が申し訳なくなる。

『分かってます。こちらこそ、すみません。あの・・・お水を頂いてもいいですか？』

目の前が揺れる。

ウイスキーなんて飲んだことないから分からないけど、きっと強いのだろう。

「あぁ。ほら、飲め。」

差し出された水を一気飲みして、今日は帰ろうと思った。

『すみません、今日は帰ります。』

立ち上がったけれど、足下が覚束無くて倒れた。

・・・はずなんだけど、衝撃はなかった。

働かない頭で顔を上げれば中也さんの顔が目の前に。

「っぶねぇな。酒に免役ない奴にはキツいだろ。ウイスキーの原液だったからな。」

ふと頭に過ったのは太宰さんからの接吻の事。

『・・・中也さんも接吻するんですか。』

「ハ？」

言いたくなかった筈なのに、お酒の力というやつなんだろうか。

思っていることが口から出ていってしまう。

『好きな人には接吻するものですか？そもそも、好きって何ですか？』

眉間に皺が寄っても綺麗だな、なんて思ってしまった。