【文スト】●益者三友●【双黒・中也】 (ページ20)

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訓練場の前に着いたが、俺はどうすればいいンだ？

太宰が何も言わずに俺に場所を伝えてきたってことは、そうする事が良いと判断したンだろう。

「チッ。」

訓練場の扉を開けて、薄暗い中に目を凝らす。

一番奥の隅に、膝を抱えて座り込んでいるのを見つけた。

扉を閉めて近付けば、

『・・・どうされたんですか？』

顔を上げることなく、小さな声が聞こえてきた。

「こンな処で何してンだよ。」

そう言えば勢いよく顔が上がり、目を見開いた。

『中也さん・・・どうされたんです？』

誰か構成員だと思ったのだろう。

「其れは此方の台詞だ。」

ドカっと隣に座れば、ニコリと笑って

『何でもありません。静かな処で休憩です。』

あぁ、そうやって隠してきたのか。

俺はまぁ、云いたくはないが、太宰みたいに頭の回転は良くねぇし、上手く何かを諭すなンて無理だ。

けど、

「嘘吐くなよ。」

これは唯一、言いたいことだ。

体の動きで一歩踏み出して走り出そうとしたのが分かった。

腕を掴んで、再び座らせる。

『離してください・・・。』

「離すかよ。」

離したら二度と戻って来ないだろ。

「言えよ。」

『何をですか。』

「思ってること、全部だ。」

また膝を抱えて丸まった。

『何もありません。』

「嘘付くなって。」

『吐いてません。』

「手前が話すまで、ずっとこのままだぞ。」

しばらく動くことなく、無言が続いた。

『・・・何でですか。太宰さんも中也さんも。今までのままじゃ駄目なんですか。』

関係を壊したくないから出た言葉だろう。

『お2人が気にするようなことなんて何もありません。気になることがあれば直します。』

「なら、それが今の状況だ。」

『・・・私は』

「自分のことを知るのがそんなに嫌か。」

顔を上げたAの瞳に光は無かった。

『知りたくもないです！こんな気持ち悪い感情も、我が儘な自分も！』

取り乱すという言葉は、今この状況の為にあるンだろうな。

「ソレが手前なンだろ、A。」

『嫌だから考えたくなかったのに！こんなに言われれば、嫌でも頭に浮かんでくる！』

頭を振って、嫌々と駄々を捏ねる子供のようだ。

ただ黙って聞いていると、落ち着いたのか光を失ったまま小さく話はじめた。