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「弓が好きだと、答えられるくらいには進むことができた。」
『私も、嫌な気持ち無く、純粋に皆の射を観られるようになった。』
「お互い、良い方向へ進んだものだ。」
『雅貴さんのおかげだよ。』
キョトンとした珍しい青い瞳。
『私が止まらずに進めたのは。』
「可笑しな話だ。俺はAのおかげで進めたんだけどな。」
それこそ分からない。きっと私が今、さっきの雅貴さんと同じ目をしているだろうなぁ。
「A。」
『ん?』
「好きだ。」
『・・・え?』
「Aのことが好きだ。」
その瞳に吸い込まれたように、私の頭は何も考えられなくなった。
「聞いてるのか?」
『・・・うん。』
「ならいいが。」
そう言って笑う笑顔はとても余裕に見える。
「青森でも病院でも我慢したんだ。もういいだろ?」
『・・・凄い余裕。それは私が雅貴さんを好きだと分かってる証拠だよね。』
「そう見えるのか。」
何で意外そうなんだろう。
「そうか。」
笑ったと思ったら
ぎゅっ
抱き締められた。
「これでもか?」
・・・トクントクン
私の頭はちょうど雅貴さんの胸板にくっついている。それも耳がしっかりと。聞こえてくる鼓動は早い。
『うそ。』
「な?」
ドキドキしてる、雅貴さんが。
「一目惚れとか、いつから好きだとか、そんなことは言えないが。気付いた時には好きだったんだよ。」
それは私も同じだ。確かに学生の頃、告白をしたけれどあの時と今は違う。いつからとか、一目惚れとか、ずっと好きだったとかそんな若い頃みたいなことは言えないけど。
「返事はさっきの、そう受け取っていいのか?」
そんな勢いで言う言葉ではなくて。
気持ちを言葉にして伝えることは出来る。
真っ直ぐに青い美しい瞳を見つめる。
『・・・好き。』
そう伝えれば笑顔と温かい体温が唇から伝わってくる。
「離すつもりはないからな。」
『私だって。』
頑なになった臆病な私を溶かしてくれた雅貴さん。
一緒に笑い合う、青い瞳に映る私の笑顔───。
fin.
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作者名:月宮 柚妃 | 作成日時:2023年3月26日 19時