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雅貴さんの話では、蓮さんからの連絡で迎えに来てくれたこと、強いお酒が使われていたこと、2人で宿舎で寝たことを教えてもらった。
「蓮が誘ったんだろ。」
『誘われた・・・気を遣ってくれた、というか。』
蓮さんが悪いわけじゃない。
「どういうことだ?」
『私が酷い顔をしてたみたいで。』
顔に出るなんて良くないことだ。
「何かあったのか。」
『・・・。』
「俺には言えないか。」
『違うの!』
そうじゃないのに・・・そんな顔をさせたい訳じゃない。
『・・・自分の無力さを痛感して。』
なぜ、そんなに目を見開いているのかな。
「何に対してかは知らないが、無力な訳がないだろう。」
『どういうこと?』
笑うとこじゃないと思うんだけど。
「俺は助けられている。」
『え?』
そんなこと今まで何も無かったよ。
「ズルいやり方で、背中を押して貰ったこともある。」
何の話?
「いくつもあるが・・・そうだな。」
顎に触れながら少し考えている。
「同じ考えを持っていたこと。」
そんな話は今まで1つも無かった。
「大人になっても何も変わらないこと。」
『待って。話したことないよ、その話。』
「酔っていたからな。」
あの日にそんな話してたの?
『・・・聞いてない。』
「それから、」
スルーされた。
「"止まっていない。"」
『!』
それはフウと話していた・・・聞かれていた?
「止まったままにしているのは俺だと思った。」
『聞いていたの。』
「あぁ。」
肩を竦めて少し気まずそうだ。
「だから爺さんを知ろうと思えた。だが、俺は臆病だから着いてきて貰ったんだ。中崎さんの所へ。ズルいやり方だった。」
あの時──。
「──彼奴らにも背中を押してもらった。だからこそ、頼みがある。」
風舞の皆。
「一緒に来てくれないか、青森に。見届けてほしいんだ、Aに。」
『私が・・・力になれるの?』
「あぁ。だから頼んでいるんだ。だめ、か?」
『ううん。』
そんなこと有るわけない。
『雅貴さんの力になりたい。』
「嬉しいことを言ってくれるな。」
『本気で思っているからね。』
「分かってる。だから、嬉しいんだ。」
嬉しいのは私。雅貴さんの力になれる、そんな嬉しいことはない。それならば。
『私に出来ることは何でもしたい。』
「一緒に居てくれること、それが一番だ。」
『!』
ズルい・・・そんな言い方をされたら胸が高鳴ってしまう。
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作者名:月宮 柚妃 | 作成日時:2023年3月26日 19時