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〈37〉 ページ37

雅貴さんの話では、蓮さんからの連絡で迎えに来てくれたこと、強いお酒が使われていたこと、2人で宿舎で寝たことを教えてもらった。


「蓮が誘ったんだろ。」


『誘われた・・・気を遣ってくれた、というか。』


蓮さんが悪いわけじゃない。


「どういうことだ?」


『私が酷い顔をしてたみたいで。』


顔に出るなんて良くないことだ。


「何かあったのか。」


『・・・。』


「俺には言えないか。」


『違うの!』


そうじゃないのに・・・そんな顔をさせたい訳じゃない。


『・・・自分の無力さを痛感して。』


なぜ、そんなに目を見開いているのかな。


「何に対してかは知らないが、無力な訳がないだろう。」


『どういうこと?』


笑うとこじゃないと思うんだけど。


「俺は助けられている。」


『え?』


そんなこと今まで何も無かったよ。


「ズルいやり方で、背中を押して貰ったこともある。」


何の話?


「いくつもあるが・・・そうだな。」


顎に触れながら少し考えている。


「同じ考えを持っていたこと。」


そんな話は今まで1つも無かった。


「大人になっても何も変わらないこと。」


『待って。話したことないよ、その話。』


「酔っていたからな。」


あの日にそんな話してたの?


『・・・聞いてない。』


「それから、」


スルーされた。


「"止まっていない。"」


『!』


それはフウと話していた・・・聞かれていた?


「止まったままにしているのは俺だと思った。」


『聞いていたの。』


「あぁ。」


肩を竦めて少し気まずそうだ。


「だから爺さんを知ろうと思えた。だが、俺は臆病だから着いてきて貰ったんだ。中崎さんの所へ。ズルいやり方だった。」


あの時──。


「──彼奴らにも背中を押してもらった。だからこそ、頼みがある。」


風舞の皆。


「一緒に来てくれないか、青森に。見届けてほしいんだ、Aに。」


『私が・・・力になれるの?』


「あぁ。だから頼んでいるんだ。だめ、か?」


『ううん。』


そんなこと有るわけない。


『雅貴さんの力になりたい。』


「嬉しいことを言ってくれるな。」


『本気で思っているからね。』


「分かってる。だから、嬉しいんだ。」


嬉しいのは私。雅貴さんの力になれる、そんな嬉しいことはない。それならば。


『私に出来ることは何でもしたい。』


「一緒に居てくれること、それが一番だ。」


『!』


ズルい・・・そんな言い方をされたら胸が高鳴ってしまう。

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作者名:月宮 柚妃 | 作成日時:2023年3月26日 19時

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