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珈琲の良い香りで満たされるお洒落で老舗であろうカフェ、メニューは全て美味しそう。お互い注文を終えると、
「お飲み物はコーヒー、紅茶、どちらがよろしいでしょうか?」
矢張り聞かれるこの2択。
「コーヒーを。」
「はい。」
『・・・すみません、どちらも大丈夫です。』
凄く申し訳ない。
「飲めないのか?」
『どっちも苦手で・・・。』
「オレンジジュースでよろしければ、お出し出来ますよ。」
『ありがとうございます。お願いします。』
「かしこまりました。」
優しい店員さん。
「コーヒー、駄目だったんだな。」
『・・・香りは大好きなんだけど、飲むのは苦手で。』
「そうか。」
『凄く良い処だね。』
「あぁ。」
時間が優雅に流れている感覚。
『ホッとする。』
「!」
『どうかした?』
固まっているように見えるけど。
「いや、何でもない。」
運ばれてきた物はとても美味しくて、会話も弾んだ。
『いいの?』
「その約束で来たんだ。」
私は食後のデザートを選び、注文した。雅貴さんはコーヒーが良いそうだ。
『わぁ!』
目の前には輝くパフェが置かれた。
「おー、凄いな。」
思っていたよりも大きなパフェで、専用のスプーンで1口食べると・・・。
『・・・美味しい!』
「みたいだな。顔を見れば分かる。」
コーヒーを楽しんでいる雅貴さんを余所に、私はパフェに夢中になった。
『雅貴さんも食べたらいいのに。』
「Aを見ていれば食べた気になるんだよ。」
『何それ。勿体ないなぁ。』
あ、そうか。
『はい。』
「・・・いいのか?」
スプーンに乗せた1口分のパフェを差し出した。とても驚いているけど。
『折角だし・・・あ、苦手なら無理にとは言わないけど。』
「いや。」
パクッ
『!』
「甘いな。・・・おいおい、何を赤くなっているんだよ。自分で差し出したんだろう。」
私、とんでもないことした・・・よね。
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作者名:月宮 柚妃 | 作成日時:2023年3月26日 19時