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「騒がしかっただろう。」
『元気で何よりだよ。雅貴さんから聞いていた通りの子達だった。』
「だろ。」
良く見ている証拠。
「楽しそうだったな。」
『皆が?』
いつもと違ったのかな。
「A。」
『・・・あー、笑っちゃったこと。』
「まぁ、それもあるが。それだけじゃない。」
楽しかった、と思う。
『私も驚いた。』
「嫌な思いをさせずに済んだのなら、こっちとしては、ホッとした。」
『気を遣わせて、ごめんね。』
いつも私のことを考えてくれているのは、有り難くも申し訳ない。
「あの笑顔が見られたんだ。俺も嬉しい限りだよ。」
『なんで雅貴さんが嬉しいの。』
「それはそうだろう。今まで浮かない顔の方が多く見てきたんだ。」
そんな姿を見せてしまっていたこと、我ながら呆れてしまう。
『恥ずかしい、情けないとこばかりでごめんね。』
「自分に素直なだけだ。何も悪いことじゃない。」
『・・・今日、こんな風に思えたこと。』
それは・・・。
『皆のおかげだよ。』
「だろうな。」
あの独特の高校弓道部の雰囲気に触れたら、もう息が出来なくなるんじゃないかと思っていた。
『こんなに楽しく、穏やかでいられるなんて・・・本当にびっくりしてる。』
「・・・妬けるなぁ。」
まぁ、確かに・・・皆のことをまだ羨ましいと思う気持ちが残っている。
『私も少し思った。』
「俺とは意味が違うけどな。」
『ん?』
意味が違う?
「見えたぞ。あの看板。」
指された方角に聞いていたお店の名前が書かれた看板があった。
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作者名:月宮 柚妃 | 作成日時:2023年3月26日 19時