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〈29〉 ページ29

「騒がしかっただろう。」


『元気で何よりだよ。雅貴さんから聞いていた通りの子達だった。』


「だろ。」


良く見ている証拠。


「楽しそうだったな。」


『皆が?』


いつもと違ったのかな。


「A。」


『・・・あー、笑っちゃったこと。』


「まぁ、それもあるが。それだけじゃない。」


楽しかった、と思う。


『私も驚いた。』


「嫌な思いをさせずに済んだのなら、こっちとしては、ホッとした。」


『気を遣わせて、ごめんね。』


いつも私のことを考えてくれているのは、有り難くも申し訳ない。


「あの笑顔が見られたんだ。俺も嬉しい限りだよ。」


『なんで雅貴さんが嬉しいの。』


「それはそうだろう。今まで浮かない顔の方が多く見てきたんだ。」


そんな姿を見せてしまっていたこと、我ながら呆れてしまう。


『恥ずかしい、情けないとこばかりでごめんね。』


「自分に素直なだけだ。何も悪いことじゃない。」


『・・・今日、こんな風に思えたこと。』


それは・・・。


『皆のおかげだよ。』


「だろうな。」


あの独特の高校弓道部の雰囲気に触れたら、もう息が出来なくなるんじゃないかと思っていた。


『こんなに楽しく、穏やかでいられるなんて・・・本当にびっくりしてる。』


「・・・妬けるなぁ。」


まぁ、確かに・・・皆のことをまだ羨ましいと思う気持ちが残っている。


『私も少し思った。』


「俺とは意味が違うけどな。」


『ん?』


意味が違う?


「見えたぞ。あの看板。」


指された方角に聞いていたお店の名前が書かれた看板があった。

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作者名:月宮 柚妃 | 作成日時:2023年3月26日 19時

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