【ツルネ】●溶け込むココロ●【滝川雅貴】 (ページ3)

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調べてみると、遠くはないけれど近くもない神社だった。階段を上がって行くと、雰囲気が柔らかい空間にお社が合った。

「お、来たな。」

『・・・おはようございます。』

「何だ、今の間は。」

だって・・・。

『神主さんみたいな格好なので。』

「神主だよ。」

『・・・え。』

いや、似合ってる似合ってないとかではなく。・・・とても似合っている。そこじゃなくて、神職の人だったなんて。

「本当にあの時の突進娘とは思えないな。」

『私も、あの時と今の滝川さんとの差がありすぎて戸惑います。』

「お互い、何も知らないんだから当然ってことだ。」

そう・・・全く何も知らないのに告白とか本当にあの時の自分を殴りたい。

『ご用は?』

「おっ。そうだそうだ。巫女、やらないか?」

『巫女?』

あの神社で御守りとかの処に居る巫女さんのことだよね。

『私がですか?』

「仕事、探すんだろ?人手が足りてないんだ。」

確かに仕事を探さなくては、と思っていたけど。

『いいんですか?どこの誰かも分からない私で。』

「仕事さえしてくれれば問題はない。お試しってことで、とりあえずはどうだ。」

『ありがとうございます。よろしくお願いします。』

有難い話に変わりはない。

「よし、決まりだ。」

その日は仕事を教えて頂き、何とかこなせそうだと安心した。

「お疲れ。」

『お疲れ様です。』

「ちょっといいか。」

『はい。』

進んで行くごとに胸騒ぎがする。あまり良い予感はしない。

「少し付き合え。」

綺麗に手入れされている弓道場───。

神社から来たのに、こんなことを言うのはおかしいかもしれない。夜だからこの雰囲気なのかもしれない。だけど、

『・・・。』

とても空気が澄んでいる───。

思わず深呼吸をしてしまうくらい。

「少し引く。中でゆっくりしていてくれ。」

道場内に入るの?

『えっと・・・あの・・・。』

「茶を入れる。ゆっくりしているだけでいい。引き終わるのを待っていてくれ。」

先に入っている滝川さんに手招きをされ、そっと道場内へお邪魔した。

懐かしいこの空間。まさか、また足を踏み入れることがあるなんて思わなかった。

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2023.3.27 月宮柚妃