Day42 ページ44
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「ここね、なつかしい感じがするの」
シャルナークが持ってきたクッキーを頬張っているとそんなことを言い出した。
「って言うと?」
「においとか、雰囲気とか」
「うーん、確かに地方規模で見れば初めて会った森から近い場所ではあるけど、屋敷に住んでた覚えはないんだろ?」
ダリアは頷くと首をひねる。
「それに、変なゆめを見て……でも忘れちゃった。なんだったんだろう」
ダリアはそこまで言うと口をつぐんだ。彼は静かに答えを待ったが、それ以上どうしても口に出すことが出来なかった。すると彼は唐突に話をすり変えた。
「……夢と言えばさ、ダリアは将来の夢とかなかったの?」
「将来の、夢?……ううん、わかんない。考えたことも、なかった」
突然の問いに少女は困惑した。今まで生きることに精一杯であったからか、盲点だったとばかりに眼を見開く。
「思い出そうとするのもいいけど、やりたいことを見つけるのもどうかなって」
「やりたいこと……」
ダリアは深く沈思した。その姿は日頃彼が見るクロロの姿によく似ている。
「深く考えなくていいよ、ただ楽しいことを見つけに行くだけ。どう?オレと一緒に行かない?」
「……うん、わかった。行く」
決意したダリアにもう一度シャルが問いかける。
「団長としばらく会えなくなるけど、大丈夫?」
「それはむしろパパに聞いた方がいいんじゃないの?」
「はは、これには団長もまいっちゃうなあ」
ダリアはこうして、半年間にも渡る長い旅をすることになった。
もちろん、それをよく思わない人物が一人……
「シャル、ダリアを連れて行くと言うのは」
「ああ、本気だけど?」
すっかり旅支度をしたダリアとシャルを見ると、クロロは青ざめて恐る恐る彼を指さした。
「まさかお前、前に言ってたハンター試験に……」
「ご明察! 連れて行きます」
「行きまーす」
ダリアが元気よく返事をすると、クロロは左手で顔を覆った。
「ダリアはまだ九つだぞ……!」
「団長もその数年後には念覚えてオレたち引っ張ってたじゃん」
「それはそうだが!」
「ということで、行ってきます」
「行ってきまーす」
こうして、クロロの説得は無念に散ったのだった。
「――バイバイ、なつかしいお屋敷」
去り際にダリアが呟いた言葉は、誰に聞かれることもなく消えていった。
─ Episode1 END ―
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ラッキーアイテム
フランクリンのピアス
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枢木 海里(プロフ) - ありがとうございます!まだまだ展開も文章も拙いものですが、そう仰っていただけて嬉しいです。これからもどうぞよしなに! (2017年8月23日 21時) (レス) id: 5ebcb79001 (このIDを非表示/違反報告)
朔間凛月葉(プロフ) - この作品とっても面白いですね!!!!!!!!!!見た瞬間ハマってしまって……と、とにかく面白いです!!!!!!!!!!これからも作品の更新頑張ってください(〃・д・) -д-))ペコリン楽しみにしてます! (2017年8月23日 11時) (レス) id: 5b4086ff03 (このIDを非表示/違反報告)
枢木 海里(プロフ) - 物部さん» ありがとうございます!そのお言葉だけで更新を頑張っていけます....!またいらしてくださいね! (2017年4月1日 14時) (レス) id: 7b14694aa6 (このIDを非表示/違反報告)
物部(プロフ) - とても面白いです。続き楽しみにしてます! (2017年4月1日 0時) (レス) id: fcc84377d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海里 | 作成日時:2016年11月27日 23時