幻影旅団の孤独なお嬢様【リメイク！】

Ｄａｙ３３ ページ35

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「さて、居場所を吐いてもらおうか」

──いっぽうのクロロは、ダリアを血眼で探していた。一人の身なりいい男を捕らえ、ナイフで腕に小さな傷を付けてやると、猛毒がジワジワと男の自由を奪ってゆく。

「オレは気が長い方だからいいが、お前はどうだ。もう終わりにしたくはないか？」
「な、にを……」
「小娘一人の居場所を教えるだけだ。その程度、お前たちにそう損があるわけではないだろう。……解毒剤と交換だ」

倒れ込んで息も絶え絶えの男に小さな瓶をチラつかせると、男は観念したように言葉を吐いた。

「このボートじゃ、ねえ……そろそろこの近くに、もう一隻ボートが停泊するはずだ」
「それは確かな情報だと信用のあるものか」
「ああ、アンタのいう、ブロンドに赤いドレスの子どもなんか……うっ、ここにはいねえ……きっとそっち、だ」

嗚咽(おえつ)混じりに言った男は、ボートの尾の方向を指差した。
暗闇の中で確認できないが、この男の証言以外に宛とするものもない。クロロは解毒剤をそっと男の手元に置いてやると、さっさと背を向けて歩きだした。

「おい待て、から、だが……動かねえんだ、おい……せめてこの薬を──」

クロロの背がしだいに遠くなるのをただ見つめることしかできなかった男の意識はそこで事切れた。
助けを乞うため上げられた手が虚しく落ちる。

(ダリアは……あの船か。見誤ったな、事を急(せ)いた)

船の甲板(こうはん)にコツコツと靴の音が響いている。船員たちは大方片付けたものの、後ろがやけに騒がしい。クルーズ船に乗り込んでいた者たちがクロロたちの存在に気がつき、再びなだれ込んでいるのだろう。

クロロは船の後方へと進むと、クルーズ船に飛び移って外側のデッキを進んでいく。程なくして男の言っていた船が見えてくると、どうやら一悶着(もんちゃく)起きているようで、所々で銃声が聞こえていた。

(あれは……フィンクスか？)

──自分より遥かに派手にやっている。

(来ないと思えば……)

クロロは立ち止まって船で暴れるフィンクスを見ていると、込み上げる笑みを堪えることができず、フッと息を漏らした。



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