幻影旅団の孤独なお嬢様【リメイク！】

Ｄａｙ２３ ページ25

.


「さて、いくつ賭ける？」

ペインスはカードをきる手を止めて、扇(おうぎ)形にカードを並べる。
対し、クロロは肘をついたままチップに手を伸ばし、赤のチップ……『１００』ジェニー分を二枚、テーブルの上に出した。

「初手だからね、様子見といこう」
「ではカードを配る」

慣れた手つきで五枚のカードがクロロの元へ滑って降りた。彼が中身を確認すれば、手札はハート、ダイヤの５、クローバーの１０、そしてスペード、ダイヤの４。同じ数字の組み合わせが二つ。

「残り四枚、全てホールドだ」

クロロがそう言ってペアとなっていないクローバーを手放すと、戻って来たカードの数字はハートのクイーン。こんなものか、とカードを放るように見せると、ペインスも場にカードを出した。

「キミはツーペア、オレはノーペアだ。愚問(ぐもん)だろうけど、ダブルアップするかい？」

「ああ、勿論だ」


磨かれた黒曜石のように光沢をもったクロロの炯眼(けいがん)が、ペインスを貫いた。
まるでこのフロアに、クロロとペインスの二人だけ。そんな空間が作り出される。


──また勝ったわあ！あははッ！

──どうして勝てないんだ、こっちは全財産叩いたんだぞ！


欲に駆られた人間たちのギャンブルほど醜悪(しゅうあく)を感じるものはない。まるで体を悪魔に乗っ取られたような──または、悪魔に魂を売ったようなその異常な賭けへの執着は、時として知らぬ何者かへの甘い蜜(ミツ)となるとも知らずに。

そんな喧騒(けんそう)も、今となってはどこか遠くへ行ってしまったようだ。

「待ってくれ、もう一度！」
「そうは言っても、キミに残された賭け金(チップ)は既に０だ。……警備員！」
「待て、オレは、オレはァッ――！」


もはや彼らにそんな声は届かない。
宵の晩餐(ばんさん)で、悪魔は今夜も人間たちの魂を喰らうのだ。


「賭け(ゲーム)は、まだ始まったばかりだ」



.

Ｄａｙ２４→←Ｄａｙ２２

ラッキーアイテム

フランクリンのピアス

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す