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第12話_02 ページ29

吐き気が収まってきたところで僕は奥の人を観察する。千切れた腕は僕から見た左腕で、千切れた……と言うよりは切断された。と言った方が正しいのかもしれない。良く見ると周りには使われたであろう刃物や、僕の世界でいうギロチンみたいなものが無残にも壊れて、捨てられている。少しは切断された様だが、そこから腐食が始まり千切れた、と言うより千切ったのだろう。胴体や頭には損傷は見られない。足には足の甲と、太腿に杭?が打ち付けられ、腕は残っている方に、掌、肘、二の腕の中心に打ち付けられている。顔は中性的で、性別は見分けがつかない。服はボロボロだが、杭が打ち付けられているところ以外は損傷は見当たらない。
なんで、この磔にされている人は何をして磔にされているのか。
いや、そもそも、この人は生きているのだろうか。
確かめた方がいいのかもしれない。
僕は震える体を無理矢理に動かして磔にされている人に近寄っていく。ハツキの横を通って磔にされている人の目の前に立つ。竜の子は、震えながら敵意を剥き出しにして怖い顔で睨んでいる。その睨む気持ちはわからないでもないが、少しこの子の力を使わせてもらおう。素直に聞いてくれるか分からないが……。

「大丈夫、大丈夫だよ……。君にお願いがあるんだけど……良いかな? 」
「……キュー?」

僕は撫でながら笑顔で聞くと竜の子は首を傾けて僕に問いかけるような目で見つめ返してきた。

「少しの間でいいの。火で辺りを照らして欲しいの……お願い……出来る?」
「キュー!!」

僕がお願いすると、元気良く返事をして僕の腕から飛び出して火を出してくれた。お陰で辺りが明るくなり、磔にされている人の全貌が見えてきた。僕はすぐさま体を磔にされている人の胸に寄せて心音が聞こえるようにした。

「……!!……生きてる」
「……当たり前さ……そいつらは俺らとは違う生き物だからな……」

後ろから今まで空気みたいな存在のハツキが口を開いた。僕は磔にされている人から体を離し辺りに散らばっている木を拾って火を付けた。

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月緋鈴(プロフ) - 黒羽さん» あ、言われてみれば「注ぐ」ではなく「盛る」ですね。指摘ありがとうございます! (2014年1月17日 18時) (レス) id: ffd19b2f3d (このIDを非表示/違反報告)
黒羽(プロフ) - とても面白い作品を書いてくださり、ありがとうございます。とても面白かったです。まあ、強いて言ってしまいますと、ご飯は注ぐものではなく、盛るものという事だけでしょうか?これからも頑張って下さいね! (2014年1月16日 18時) (レス) id: 8545d7a4af (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月燈 鈴 | 作成日時:2013年12月30日 20時

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