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作り笑いが30 ページ32

Aside

加州清光は私が泣き止むまでずっと抱きしめてくれた。そんな彼の温もりに昔の記憶が蘇る。

加州清光はとても好青年な可愛らしい刀だ。今も昔も。彼はとても察しがいいのか、そこまで関わりを持つ刀ではなかった。

それでも最低限の話もしたし、近侍の時もとてもよく働いてくれた子だった。

私の中では最初こそ苦手にしていたもののそんな気配りをしてくれる彼にはとても感謝していた。


「、も、大丈夫、」


そう言って私と加州清光は離れる。後ろを向いて私は自分を抱きしめるようにした。


「何も聞かないでください…このことは誰にも言って欲しくないです」

加州「主…」

「明日には、明日には、ちゃんと戻ります」


そう言うと加州は後ろから私を抱きしめた。びっくりしたけれど先程みたいに怖くなったりしなかった。きっと彼はあの人とは違うと本能的に感じているからだろう。

安心しているのだと思う。


加州「戻らなくてもいいよ、辛い時に怖い時に泣いちゃうのはしょうがない事だから」

「…っ…」


鼻の奥がツーンと痛くなってポロリ、と涙がこぼれる。


加州「俺たちは主の力になりたい、でもなれないこともあると思う、それでもね、抱きしめてあげることはできるんだ」

「、ふっ、…うっ…、」

加州「苦しそうに泣かないで、声を殺さなくてもいいんだ」


声を殺していたのは泣いていることを知られたくないから。叩かれたくもないし、怖い思いだってしたくない。

でも許されたら涙がボロボロ流れてきて、大声で泣いた。手が涙で濡れているのにそんなの構わなかった。


「こわ、ぃ、つらぃ、、ふっ、、…なん、で、…」


胸の中にあった言葉が沢山出てきた。今まで閉まってきた言葉はほとんど怖い、辛い、だった。

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作者名:一ノ瀬ミルク | 作成日時:2022年9月18日 0時

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