作り笑いが27 ページ29
Aside
「お久しぶりです、見習い様」
ニコニコしながら見習いを見るとパラパラと紙を落とした。拾おうとしたら見習いは私の肩をガシッと掴んだ。
志緒「いつお戻りに!?」
「つい先程です、こんのすけから話は聞いていませんでした?」
志緒「…はい、私はずっと仕事をしていましたので」
見習いの手は少し黒くなっていた。万年筆のインクのせいだろう。山積みの仕事資料もあってここで審神者の仕事を全部やってくれていたのだろう。
「ご心配をお掛けしました、一緒に大広間に来て頂きます」
志緒「でも、私は仕事が」
「…後で一緒にやりましょう」
見習いの手を引張って連れ出した。
大広間にはニコニコして皆がお利口に座っていた。
私もニコニコで座っているが胸の中はニコニコではない。なんなら怒っている。
「皆様、お元気そうでよかったです、皆様が健やかに居れて私は嬉しいです」
そう言うと一気に桜の花びらが飛び交う。みなも喜んだのだろう。
「ですが、私は怒っています」
え、と声が聞こえた。当たり前だろう。役目を理解していないようだったし。
「出陣もしない、遠征もしない、ただ本丸でぐぅたら生活」
加州「あ、主?」
「皆様のお役目を理解していますでしょうか?あなた方は歴史を守る刀です、私が不在の間でもそのお役目をしないのはなぜでしょう?」
ニコニコしながら言うもんだから短刀の子たちは涙を流している。そんなところで可哀想なんて言ってられない。
「ここは将来私はいなくなって見習い様が引き継いでくださるんです、今の主は私でも未来の主は私ではありません」
志緒「…A様、ですが、」
「私は明後日にここを出ます、本当はまだ入院していなければならないからです」
今剣「っ、いやです!ぼくはいやです!」
そう言ったのは今剣だった。明るく飛び回る子天狗のような刀だ。
こういった発言はよくある事だし特に気にもならない。
岩融「今剣、落ち着くのだ」
今剣「ぼくはあるじさまとはなれたくありません!!」
「…今剣様」
今剣「あるじさまはぼくたちといっしょにいたくはないんですか!!いつもそうです!あるじさまはぼくたちとちゃんとはなしてはくれない!!」
涙を流してそう言った。見習いもしくしくと泣いている。周りも泣いている。
笑顔でいた顔を私は無表情になった。この本丸で初めて誰かの前で無表情になった。
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作者名:一ノ瀬ミルク | 作成日時:2022年9月18日 0時