【ミカグラ】造花の上で踊りましょう (ページ14)

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14.音色ページ14

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最後の授業が終わり、私は足早に寮へと帰った。

私の探索妨害システムが破られた？確認したがシステムは何の問題も無く、情報が流出した記録もない。

『…記憶を消す前の私を知る人？』

もしかすると二宮先輩も知っているかもしれない。

私は隣部屋に行き手当り次第ディスクを拾って再生装置に入れた。

やっと手に入れた"平穏"が崩れるような気がして安心できない。

『早く私を安心させて…』

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『こんにちは、初めまして』

「…」

髪の長い男の子は、俯いたままこちらを見ようとしない。

真新しい中等部の制服を着ていて、胸には《桜田》と書かれたプレートを付けている少年は、入学式が終わって一週間経った今でも孤立していた。

『こんにちは！！！』

「？！」

私は堪らず彼の顔を持ち上げると、案の定ビックリして彼は目を見開いた。

『私、椎原A！貴方は？』

「ぁ、う、え…？」

『貴方の名前、教えて！』

「僕は…桜田、奏…」

『桜田くん、よろしくね！』

手を差し出すと、彼は恐る恐ると言ったように握り返してくれた。

それから私は彼と過ごす時間が増えていった。

『部活は何に入るの？』

「僕は弓道部に入ろうかな、って」

『私もなんだ！一緒に頑張ろうね！』

「！うん！」

2人で頑張って、色んな大会でも成績を残して。

3年生になった頃には親友であり、信頼関係にまでなっていた。

そして…私は桜田くんに人知れず恋をしていた。

『…』

「…変、かな」

『…いや、似合い過ぎてびっくりしたよ…』

「！そ、そうか」

『あれ、話し方も変えるの？』

「いつまでも情けないままじゃ、な！」

『前のままでも良かったのに』

髪を切り、口調を変えた彼に不覚にもドキッとした。

「今週暇か？」

『予定は無いよ！』

「最近目が悪くなってるって言ってただろ？眼鏡買いに行こう」

『ホント？いいの？』

「おう、ブルーライトカットの眼鏡買おうぜ！」

『うん！』

ただの買出しにデートだと思って気合を入れて可愛くしたりもした。

でも彼は気付かない。

いや、気付かなくても良かった。

最初は彼から聞こえる皆とは違う音に惹かれた。

その音で作った曲が自分史上1番の出来だったけど、誰かに聞かせたくなかった。

自分の中で温めて、独占しておきたかった。