黄色の花びら ページ4
ビクター君はエマちゃんの横にいる私を一瞥すると、怯えたような顔をして小刻みに震え始めた。
あ、怖がられてる。と、感じる私をよそに、エマちゃんは明るく私の事を紹介する。
「ビクター君！この子が、今日新しくやって来たサバイバーのAなの！お花屋さんなの！」
するとビクター君は納得したかのようにペコッと頭を下げた。
「よろしくお願いします。あの、これ、どうぞ」
ダリアを差し出すと、ビクター君はおずおずとそれを受け取った。
「……ありがとう。……よろしくお願いします」
小鳥の囀りのように小さな声だった。中性的な子供のような声。
「仲良くなれそうで良かったなの！ビクター君は此処でお手紙を届ける仕事もしているの。誰かに届ける時は頼んでみるといいなの！」
「そうなんですね。じゃあ、その時はよろしくです」
ビクター君はこくっと頷いてから、もう一度丁寧にお辞儀をして静かに扉を閉めた。
「それにしても。ビクター君、社交恐怖で初対面の人とは緊張しちゃって何も言えないの。だけど」
エマちゃんはニヤッと笑って、私の顔をじっと見つめてきた。
「Aは違ったなの！特別なの！」
「え、えぇ？」
いきなりそんな事を言われるもんだから吃驚する。確かに会話したけれども。
「お、お花のお陰ですよ」
そう言い切って、まだニヤニヤ顔のエマちゃんに、
「納棺師さんの部屋は自分で探せそうなので失礼します。ありがとうございました」
と、頭を下げて速足でこの場を立ち去った。
邪念を追い払いながら、左右の扉のプレートを確認していく。
別にエマちゃんが言ったことは何の深い意味はないだろう。忘れないと、今後の関係に影響が出てしまう。
ブンブン頭を振っていると、地面にある物を見つけた。
屈みこんで拾い上げてみる。
黄色くて、小さくて、薄くて、柔らかい。
「何かの花びらでしょうか？」
「君。彼の部屋の前で何してるんだい？」
背中に声が降り掛かってきた。
確かに誰かの部屋の前で屈みこんでいたら結構なおかしな人だ。
慌てて立ち上がって振り返ると、背の高い男性の方が立っていた。
フードに目隠し。最初の見た目のパンチが強くてしっかり覚えている。
「イライさん！」
「ああ。Aさんか。どうかしたかい？」
「納棺師さんに挨拶しようと部屋を探していたら、これが落ちていて。花びらだと思うのですが」
イライさんに見せると、彼は簡単に答えを言い当てた。
「それはイソップ君の薔薇だね」
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にゃろ(プロフ) - 錆さん» コメントありがとうございます！とても光栄です。更新頑張ります！ (2020年5月24日 20時) (
レス) id: 67ae364a5f (このIDを非表示/違反報告)
錆(プロフ) - コメント失礼します。いつもワクワクドキドキしながら読ませていただいてます。無理せず更新頑張ってください！ (2020年5月24日 17時) (レス) id: a752c0635d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：にゃろ | 作成日時：2020年4月18日 1時
