真っ赤な薔薇 ページ23
「駄目よ、足りないわ」
エマちゃんの言葉を否定したのはウィラさんだった。
突然の登場にヘレナちゃんを省く私とエマちゃんが悲鳴を上げる。
「い、いつからいらっしゃったのですか！？」
「お返しの花のお話しをしていた時からですよ〜」
「えっ、そんな前から！？……って、ヘレナ気づいてたなの！？」
「あぁ、はい。音が聞こえたので」
流石、耳が本当に良い方なだけある。
ヘレナちゃんに関心していると、一人取り残された様な感じのウィラさんが強い口調で言った。
「とにかく。香水を作るのは止めときなさい」
「そう言うウィラは何で籠なんて下げてるなの？」
エマちゃんがウィラさんの籠を指さした。
籠の中には真っ赤な薔薇が幾つも入っている。
「香水に使うからよ」
「やっぱりなの！独り占めずるいなの！」
膨れっ面になったエマちゃんにウィラさんは、はぁ……とため息をついた。
「これだけでは全然足りないの。普段、香料は注文しているのだけど、可愛い花屋さんも来たことだし、一部だけここの荘園と周りの森から採った香料を使おうかと思って」
私は目を見張った。
真っ赤な薔薇は籠いっぱいに入っている。これだけの量でも足りないとなると、本当に膨大な量だ。だけど、調香師であるウィラさんが言うなら本当の事だろう。
なら、これだけしか咲いていない花では到底無理だろう。
香水は諦めるしか……。
暗くなった空気に、ウィラさんの声が明るく響いた。
「まあ、香水が駄目ならハーバリウムとかはどう？」
「はーばりうむ？」
「植物とかを油と一緒に瓶の中に入れて飾るのよ。とっても綺麗よ」
瓶の中に植物が……。想像だけでも綺麗な物だと分かる。
「油なら香水で使う物がいくらかあるし、ドライフラワーに出来そうな水分が少ない花は、頭に入っているでしょう。ね、花屋さん？」
ウィラさんはこっちを見てウインクした。
「はい！分かります！」
そう言い切って、私もウィラさんに対してウインクを返してみる。……が、少しぎこちなくなってしまった。
ウィラさんは苦笑いしてから、
「じゃあ、作りたいと思える花を持ってきなさい。教えてあげるから」
と、踵を返す。
また、お礼をしなくてはいけない方が増えてしまった。だけど、悪くない気持ちだ。
そう思っていると、もう一度中庭の扉が開いてウィラさんが顔を出した。
「後A！ウインクのやり方もちゃんと教えるから！イソップを……っと、何でもないわ」
また音を立てて扉が閉まった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 65人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にゃろ(プロフ) - 錆さん» コメントありがとうございます！とても光栄です。更新頑張ります！ (2020年5月24日 20時) (
レス) id: 67ae364a5f (このIDを非表示/違反報告)
錆(プロフ) - コメント失礼します。いつもワクワクドキドキしながら読ませていただいてます。無理せず更新頑張ってください！ (2020年5月24日 17時) (レス) id: a752c0635d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にゃろ | 作成日時：2020年4月18日 1時
