白いダリア ページ2
「庭師のエマなの！これからよろしくなの」
そう言ってニッコリと微笑む麦わら帽子の女の子に、これで最後になる白いダリアを渡して、自己紹介会は幕を閉じた。
若干恥ずかしかったけれど、優しい人ばかりで最初に感じていた不安はどこかへ吹き飛んでしまったようだ。
流れ解散になっていたが、何人かの女の子がまだ残っていて、私を囲う形で話し掛けてくる。
「Aさんってお花屋さんなのね。綺麗なお花、ありがとう」
「ね、本当に綺麗。お礼に今度、香水プレゼントするわね」
温かい笑顔を浮かべる皆の手には白いダリアの花。
ダリアの花言葉は感謝だ。きっとこれから沢山お世話になるだろうから、ありがとうの先取り。
沢山の量で大変だったけれど、喜んで貰えて良かった。
お花で喜んでくれることほど花屋にとって嬉しいことは無い。
嬉しくなっていると、溜め息混じりに技師のトレイシーちゃんが言った。
「……にしてもやっっぱりあの二人は来なかったね。自己紹介は大事なのに」
「社交恐怖だから仕方ないですよ」
と、宥める心眼のヘレナちゃん。
「二人？」
ハテナマークを浮かべながら言うと、医師のエミリー先生が教えてくれた。
「ポストマンのビクター君と、納棺師のイソップ君なんだけど、社交恐怖持ちでね……」
『納棺師』
その響きにドキッとした。
その後から聞こえてくる話しなんて耳に届かないくらい意識が過去へと遡る。
『納棺師さんだよ、今から綺麗綺麗にしてくれるの』
幼い頃、涙と鼻水で服をぐしゃぐしゃに汚しながら、見た魔法の様な光景。
泡沫の夢の様な記憶。
「会いたい」
ポツリと呟いた言葉に、その場にいた全員が注目する。
「会いたいって、ビクター君とイソップ君に？」
うっかり零れた言葉に自分自身でも慌てながら、
「ご挨拶しときたいなー、と思いまして……」
適当に思いついた言葉をペラペラと並べた。
もしも、憧れの納棺師さんに会いたいんです、だなんて正直に言ったら、自分の秘密にしている部分を少し覗かれてしまうみたいで恥ずかしい。
それに、新人は納棺師のこと好きらしいよ、とか一目惚れらしいとか、根も葉もない噂が尾ひれはひれを付けて流れてしまう気がする。
「オッケーなの！お部屋に案内してあげるなの！」
そんな感情を露知らず、エマちゃん達は快く頷いてくれた。
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にゃろ(プロフ) - 錆さん» コメントありがとうございます！とても光栄です。更新頑張ります！ (2020年5月24日 20時) (
レス) id: 67ae364a5f (このIDを非表示/違反報告)
錆(プロフ) - コメント失礼します。いつもワクワクドキドキしながら読ませていただいてます。無理せず更新頑張ってください！ (2020年5月24日 17時) (レス) id: a752c0635d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：にゃろ | 作成日時：2020年4月18日 1時
