【第5人格】籠の鳥【短編集】 (ページ27)

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独占欲【探鉱者】ページ27

「この大馬鹿者が！！」

その言葉と同時に向かってくる大きな杖を間一髪の所で避けた。

「バルクさん、一生のお願いです」
「まだ言うか！！」

次々に襲いかかってくる杖を全て避けて、もう一度頭を下げた。

「何度でも言います！Aの体に強力な磁石を埋め込んでください！」
「想い人にそんな事を平気でやるような奴に儂は協力なんぞしない」

どれだけお願いしても、断固拒否してくるこのジジイ。
だけど僕だってそう簡単には折れられない。

「想像してみてください。もしもAの体に磁石を埋め込んだら。僕と一生くっ付いて過ごすことになるんですよ！Aは僕から離れられないし、他の男に取られる心配もない！天国じゃないですか！」
「それはかなりの地獄絵図じゃな」

そう言ってバルクは酒を仰ぐ。アルコールの臭いを巻き散らかしながら、
「26号！此奴を此処から摘みだせ！」
と叫び、指を鳴らした。

すると直ぐにペンギン型のロボットが出てきて、僕に向かって大量の爆弾を投げつけてきた。

これは避けきることはできない。ちっと舌打ちして、ドアの向こうへと逃げた。

「ああ。あのメカジジイも駄目かー。もう僕が直接手を下すしか方法はないのかな……」

手術が出来そうなサバイバーには殆ど声を掛けた。だが、トレイシーは無視ばっかだし、エミリー先生はカウンセリングを勧めてくるし、アダムスさんは絶句していた。

「はあ。何て皆非協力的なんだ……」
と、此処で嘆いていてもしょうがない。取り敢えず僕一人だけでも準備しないと。

「エミリー先生の部屋に忍び込んで麻酔とメス、輸血パックと手術に関する本を貰って、包帯だとかの針はヴィオレッタさんに上手くいえば沢山手に入りそうだし……」

必要そうな物を指折り数えていく。

「ノートン君？」

だがその一声で思考は完全に断ち切られる。
どきんと心臓が跳ねた。
この愛らしい声を聞き逃すわけない。

「どうしたの？A」
僕はさっきよりも幾つかトーンを上げた優しめの声で、目の前にいる声の主の名前を呼ぶ。
普段ならAと会うと彼女を今すぐに愛でたい
という気持ちでいっぱいになるが、今は焦りの気持ちでいっぱいだった。

……今の独り言、聞かれてないよね？

こんな僕をよそに、彼女は呼ばれるとへにゃっと笑った。

「あのね、さっきヘレナとお茶してきたの」

彼女の言葉に、更に心臓が飛び跳ねた。
あのアダムスさんだ。人と話した事をぺらぺら喋るような人ではない。