吸血鬼【写真家】 ページ21
「こんばんはー、遊びにき………うわっ」
思わず、声を上げてしまった。
「何、勝手に人の部屋のドアを開けて早々に」
ジョゼフさんはほかほかと湯気が出ているカップをテーブルに置いて、眉を顰めた。
「だって、その衣装……！」
黒と赤を基調とした吸血鬼の様な服は勿論、普段髪を束ねてる人が下ろした時って良いよねっていう世界の理を利用しているその髪型も。
「かっこいい。色気がオーラとして漂ってますね」
「ああ、そう？ありがとう。新しい衣装なんだ。確か血の剣と言ったっけ」
「吸血鬼みたいで好きです。夜中に見ると尚更」
「そんなに褒められると少し照れるな」
ジョゼフさんは照れくさそうに視線を逸らした後、
「折角遊びに来てくれたんだし、君もお茶でもどうかな？」
立ち上がって、向かいの席の椅子を引いてくれる。
それを目当てにやって来たのだ。断る理由なんて無い。
私は頷いて、引かれた椅子に腰掛けた。
「さて。どうして、いつもつれない君が此処に来たの？しかもこんな夜更けに」
「いやー、目が醒めてしまって。暇してたからいつも早起きなジョゼフさんならこの時間も起きてるかなーって」
「成程。要は暇つぶしに態々僕の所まで来た、と」
ジョゼフさんは笑みを引き攣らせた後、はあー、と溜め息を吐く。
「まあ、別にそれで君の顔を見られたなら、僕はラッキーという事かな」
そう言いながら私の前に紅茶を置いてくれる。
「ありがとう」
「いえいえ」
ホカホカと息を吐き続ける琥珀色の液体からは、上品な香りがする。
ふと、私はジョゼフさんの方のカップの中身を覗き込んだ。その中身は、私のカップの中身と同じ。
「どうしたの？」
「その衣装だから、血とか飲んでるのかなーって」
「衣装が変わっただけで主食が変わったりしないよ」
そう苦笑いしながら、ジョゼフさんは横髪を耳にかけて、カップに口付ける。滅茶苦茶色っぽい。
「さっきといい、今といい、君は余程吸血鬼が好きなんだね」
「勿論！なんかロマンを感じるっていうか……」
「何。誰かに血を吸われたいの？」
「ち、違います！痛いの嫌だし」
私は首をブンブンと横に振る。
そんな私にジョゼフさんは妖美な笑みを浮かべて、言う。
「あれ。知らないの？吸血鬼に吸血されると、快楽が得られるっていう特徴があるって」
「知りませんよ。何だか官能的な本に出てきそう……」
「ついでに、吸われた人も吸血鬼になるー、みたいな」
「ああ、それは聞いた事ある」
「羨ましいよね……」
「は？」
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作者名：にゃろ | 作成日時：2019年11月4日 21時
