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反対側のゲートへ向かう途中、工場の隣辺りの場所でカラスがカーカーと鳴きながら円を描いているのが見えた。
その円は移動することはなく、ずっと同じ場所に留まっている。
きっと長い事暗号機に触れずにいたサバイバーだろう。一体こんな所で何をしているのだろうか。
近付いてみると、それは今日私を手こずらせてくれた漫画家だった。
彼女は頭を暗号機のキーボードの上に乗せて、だらしなく腕を垂らしていた。ピクリとも動かない。
一見こと切れている様にも見えたが、背中は僅かに上下しており、眠っている様だった。
誰かに睡眠薬でも盛られたのか？
そう思った瞬間に、パッと光が頭上で弾けた。
ああ、そうだ。バーメイドに確か酒を貰っていた。まさか、それで酔い潰れて眠ったのか？
はあー、と溜め息が漏れた。
何だか、あんなに熱く煮えたぎっていた殺意も冷めてしまったようだ。
すやすやと寝息を立てるAを抱き上げ、脱出ゲートまで向かう。
このまま椅子に座らせても良いが、何だか卑怯なやり方だと思うし、ハッチに落としても良いが、その後彼女が自分の足で荘園まで戻れるとは思えない。そのまま風邪を引いてしまう。
だから、反対側のゲートまで向かって、他のサバイバーにAを預けるとしよう。
歩いていくと、ゲートの上に取り付けられているライトが目に入った。
その前にはサバイバーのバーメイドと機械技師がいる。脱出ゲートを開けている最中な様だ。
私の姿を見るなり逃げ出そうとしたが、クルクルと回って敵意がない事を示すと、警戒しながら此方へ戻ってきた。
「えっ、何で攻撃してこないの？」
「本当はこれからあなた達を攻撃しようと思っていたのですが、Aが眠っているのが見えて」
少し屈んでAの姿を見せると、二人は目を丸くした。
「わあ、すやすや寝てるねー」
「何でかしら。私が酒を渡した時は眠そうには見えなかったけれど」
「そのお酒が原因だと考えられます」
デミは信じられない、といった表情で口を押さえた。
「ええっ！？でもドーフリン酒よ？アルコール度数あんなに小さいのに」
「しかしそれしか考えられません。だから、Aを荘園まで連れて行ってほしいのです」
二人は快く承諾してくれた。
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作者名：にゃろ | 作成日時：2019年11月4日 21時
