【第5人格】籠の鳥【短編集】 (ページ12)

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救助【探鉱者】ページ12

硝子が割れた音の次に僕の耳に飛び込んで来たのは、暗号機の発する機械音と、誰かが攻撃を受けた事を知らせる鐘の音だった。

確認すると、占い師の隣、『漫画家』という見慣れた文字の上のアイコンが全部黄色に染まり、その中の人を表す絵は頭を抱えていた。

……マジかよ。

開始30秒も経っていない上に、しかも一撃で真っ黄色って、恐怖の一撃を貰った以外何も考えられない。

「あれ。もうAダウンした？」
一緒に解読していたイライが暗号機を叩きながら言った。
「みたいだね。Aは心音がならないだろ？しょうがないよ」
「助けに行くかい？」
「勿論いくよ」
その瞬間イライは口元を綻ばせてAには甘いよな、とからかってきた。
別にそれには自覚してるつもりだし10秒チェイスはA以外見捨てる事もある。
だから僕は何も言わなかったが、代わりにイライのフードを思い切り引っ張ってやった。
むせるイライに僕は解読に集中してー。と嫌味ったらしく言って、走り出す。

ちょうど漫画家のアイコンのマークが椅子に縛られたものになった。同時にAの姿が赤くなって現れる。

大丈夫。そう遠くはない。半分を切る前に救助出来そうだ。

永眠町のコンクリートの道を走って走って。ようやく着いた。
建物の角から覗くと、開けた道と線路、そして椅子に座らされたAがいた。勿論その隣には芸者がいる。
Aは俺の存在に気がついて、ぱっと表情が明るくなった。
すぐ助けるから。そう心の中で呟いて、地を蹴る。

その時の音で芸者に気付かれたが、僕が腕を振り上げる方が僅かに早い。
手首のスナップを利用して磁石の距離を調節し、磁石を放った。それは芸者に向かって綺麗に落ちていく。
磁石が着いたからか芸者は眉を顰めた。僕は逆に嫌味ったらしく頬を吊り上げ、芸者の元へ流星の如く疾走する。

一定の距離近づいた僕と芸者は逆の極の磁石を近づけた様に互いを弾き合った。
弾かれた芸者は背中から勢い良く壁に衝突した。響く轟音。

今だ。

僕は直ぐにAを縛り付けていた椅子の紐を引き千切り、手枷を外した。

OK。時間はギリギリ半分を超えなかった。
礼と言うAに、まだ終わってないよと忠告して、刹那ですぐ傍まで来ていた芸者に目を合わせ磁石を投げる。が、間に合わなくて胸から腹にかけて激痛が走った。

「少し近くでイライが解読してる。そこまで走って！」

僕の声に頷いて、Aは走り出す。

僕はそのまま。さあ芸者、僕が相手だ。