黒服の秘密のお仕事

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優しい電話の声で
確かに癒された
ニヤニヤしてたなんて

気持ち悪いって…
どんな顔してしまったの


「大した事じゃないですよ」
「だから何言われたらそんな顔になんの」

紫耀くんがカウンターに肩肘をつきながら

まるで
単純な女、とでも言うように視線を向ける


その呆れた様な表情も

…好きだな…



思考が停止しかけたのを叱咤して



紫耀くんから
目線をそらすようにカウンターへと向ける


「お礼を言われただけですよ……声が優しいなぁ、と思っただけです」



「副社長が好きなの？…優しい男ならいいわけ？」

「お会いした事ありませんよ。恐れ多い…優しい人は…そりゃ優しいに越したことはないんじゃないですか？」

紫耀くんが優しい事は
皆が知ってる事だから




「女の子は…男前に迫られたらキャーキャーなるもんな…」


なっ…
…まさか

「記者に迫る気なの？やっていいか副社長に聞いて貰えば」





「副社長、副社長、うるさい」
「紫耀」

言い返そうとした時
電話を終えた浜田が

「朝8時に迎えがくる。もぅ安定したなら寝ろ」


そうだ寝なきゃ
言い合いしてる場合じゃ無かった


足早に
個室にコンビニ袋を取りに戻って
出口へ向かうと

紫耀くんはコートを着るところだった



少し伏せ目がちに

広げた腕に通る袖
空気を含むように羽織って
襟を正す



なんて雰囲気を作るんだろう…


なんなの
ただそれだけでカッコイイのは
本当にずるい




声が震えないように

「ちゃんと寝てお肌ピチピチでキラキラな笑顔を期待してますね」

店を出ながら
紫耀くんがさっきまでの表情とは違い

少し楽しそうに鼻で笑って

「ん」


エレベーターを待ってる時に
持ってたコンビニ袋を差し出して

「紫耀くん、コレどうぞ。今日はすぐ寝るけど、暫く滞在のお供に」

お菓子とお茶が入った袋を渡す

「ありがとう…明日頑張るから…ちゃんと報道見てて」

「はい…」


エレベーターが到着して
浜田が先導する

私はその場に残り


「平野紫耀様、おやすみなさいませ」

エレベーターが閉まるまで
一礼したまま

見送った




もうちょっと…
一緒に居たかった

できればさっきのままで

背中にある腕を
今までで一番近い香りを

私をじっと見てるだけの表情を…

気の済むまで眺めていたかった


なんて不謹慎だ

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