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16 電車 ページ16

短大の卒業試験も終わって早めの春休み

友達の買い物に付き合ってご飯食べて帰る

短大の路線と違うからすっかり忘れてたけど、凄い帰宅ラッシュに途方にくれていた

こんなの乗りたくない
快速で50分
各駅停車なら…
どのくらいかかるんだろう…
調べようと携帯見て歩いていたら

「ゆうちゃん??」

ぁあ…
この声…

成人式は二ヶ月前

平静をできる限り装って

「紫耀くん!…仕事?今帰り?」
「うん。営業帰り。ゆうちゃんは?」
「友達とご飯食べてたんだけど…この電車に乗れる気がしなくて考えてた」
「…確かに…勇気要るね…まぁ、でも仕方ない。次ので帰ろ?」

ふわっと微笑む

胸が苦しい
大人になった紫耀くんは
見慣れなくて、困る

次の電車を待つ間も
何を話していいかわからなかった

紫耀くんの横に並んで立つ

そんな事は初めてだったから

肩が触れても
手が当たっても

昔から動けない

電車が到着してこの駅発の電車に切り替わる

この列の並びだと座るのは無理だからどこに向かって歩けばいいんだろ…
と紫耀くんを見ると
触れてた手を掴まれた

ドアが開いてなだれ込む
紫耀くんが誘導してくれて、隣の車両の連結ドアにもたれられる位置に立つことが出来た
流れてくる人から庇うように
守ってくれている

目の前のスーツから
私の知らない紫耀くんの香りにクラクラする

手は繋がれたまま
電車は発車した

揺れる度に捕まるところが無くてグラつく

「…俺に捕まってて」

紫耀くんはジャケットのボタンをあけて

片方の手は繋がれたまま、反対の手を紫耀くんのジャケットの中に導く

…これで捕まったら紫耀くんに抱きついちゃうんじゃ
遠慮して手触りのいいシャツを軽く掴む

「…髪の毛…思いっきり切ったね」
「うん。成人式終わったし4月から保母さんだから切った」

成人式が終わって長くする必要も無くなって

紫耀くんに触れられた髪を全部切った

人生初のボブにした

電車だから小声で話すためだと言い聞かせながら耳から意識を離す

目の前には紫耀くんの首筋と緩んだネクタイ
耳から聞こえる紫耀くんの囁き
全身を包む紫耀くんの香り
私と繋がれたままの紫耀くんの手


ぁあ…
こんなの無理だよ…

シャツを掴んでいた手を離し背中へ伸ばそうとした時

第一ボタンが外れた襟が動いた時にだけ、見え隠れする位置に

薄くなった


誰かの所有印

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作者名:しろ | 作成日時:2021年11月25日 18時

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