ヒーロー じゃない （2）

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「ただいま〜…？」

廊下の先まで真っ暗な部屋

地方から予定時間より少し早めに帰れて

……もしかして…先に寝てる？


今はもぅ、二人の寝室になってる自分の部屋を覗くと
やっぱり真っ暗でベッドにも誰も居ない

平野さんの荷物置き場になってるゲストルームを覗いても
真っ暗なだけで、物音一つしない



……何か仕事が入ったんかな
私の方が帰りが遅いのが確実やったよね
だから、行く前にあれだけご機嫌とって…

リビングの電気をつけて自分の予定が書いてあるカレンダー、その横の同じサイズのカレンダーには平野さんの予定が書いてあって

まだ連絡先を知らない私たちの、せめてものすれ違いを回避する為に、と
仕事のスケジュールが書いてあって

今日の日付けに、増えた仕事は無くて


……遊びに行ったりしてるんかな
そういや平野さんがここに帰って来るようになって遊びに行ったりって無かった…かな…
割とすぐにドラマ撮影が始まったから、ずっと一緒で考えたりもしなかったけど
メンバーさんとかとご飯食べに行ったりとか友達と遊んだりもするよね？

そんなのは、当たり前でわかっていて
嫌だとかは思ってなくて
私だってのんちゃんと顕多くんと遊んで帰って来た所やし



人気の無いリビングで
電気だけが着いてても、どこか落ち着かない


……えっと…
帰ってきたし……お風呂…かな…


しん…と静まり返った部屋で
足の裏に根っこが生えたみたいで…動けない



















ガチャ

「あれ？ゆうちゃん帰ってる？」


ぼんやり遠くで聞こえて
聞きなれたスリッパの、ペタペタと独特な足音が聞こえてきて
リビングの扉から ひょこっと

「ゆうちゃん〜？あ、おかえり〜早かった………どうした？」


のんびりな声から一転、鋭くなって
駆け寄ってくる

「何があった？」

近づいた顔は眉間にシワが寄っていて
夢のように、滲んで見える

そっ と、腫れ物にでも触れるかのように
頬を包む手が暖かくて
顔の上で動く指が、私の涙を拭ってくれたのがわかって



「…っ…ごめ、だい、じょうぶ」

「そんな訳無いでしょ。…泣いてるのはわかる？」


確信を持って否定されて
私も自分が泣いてる事に戸惑っているのを
平野さんは気づいてくれて





じっ と、私が頭の中を整理するのを
同じく眉間にシワを寄せながら待ってくれて






「ぎゅ、って、して…」

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