ヒーロー じゃない

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「俺に
何も言うことないんかよ」




今の私は
どんな事を言えばいいんやろ…



二年前に触れられた距離は、最悪な形になる様に自分から手放した

出来るだけ忘れて欲しくなくて
出来るだけ永い期間、私を考えて欲しくて


何も言わずに 消えた

そうすれば
アイツ一言位言えよ、って
ムカついてもらえる、文句を言ってくれる

「アメリカ行きます」
「そっか。じゃぁ元気で」
なんて 終わられたら
日本に帰って来れないと思ったから


だから
「何も言うことないんかよ」 は、
二年前に私が何も言わずに渡米した事を
覚えてくれていて
それに一言物申す位には、私の事を考えてくれていたって事なのか

二年間のうち
ちょっとは 考えてくれてたって
思ってても…いいかな




握った手の大きさに懐かしさと
ずっと

ずっと 平野さんの事を忘れられなくて

ポロポロ零れる涙と一緒に
平野さんが好き
って言ってしまわないように

懸命に 口を覆って塞ぐ



「…何か言えよ」

何なら言ってもいいのか
平野さんの手の温度に、懐かしさと既視感で



握った手に力を込めてしまった



「……また、それ」

呆れたように、嘲笑うように
短く吐かれた息の後に聞こえてきた声に
身体が強ばって 手に込めた力を抜いた


平野さんからも手が離されて

繋がるものは 何一つ無くなった



「…っ…ふぅ…ぅぅぅぅ…」

嗚咽が 堪えきれなくて

崩れそうになった身体が地面に

つく前に、力強い腕が支えてくれた



「俺…怒ってっから」

崩れる事も許されず、立たされる


「……自分だけ泣いて…ほんっとズルい」


逃げる事も許されず



「何も…言わないなら……なぁ、」

支えてくれてた手が離され
自分の足に叱咤しながら力を入れて 立つ

滲んだ視界で平野さんを 見た


















「……俺に、会いたかった？」







そんなの 決まってる


懸命に、口を覆ったまま 首を縦に振る
涙が地面にも落ちて
覆った手のひらも 涙で滑る


さっきまで握っていた手を
そっと 引きよせられて
耳元で聞こえた声は


「………っ…会いたかった」


震えていて

手を 平野さんの背中に導かれ
抱きしめ 合った


お互いの背中にキツい程しがみついて




「ちゃんとっ！…両手まわせよっ」



頭に響く声に
口を覆っていた手も背中に回して

二年ぶりに お互いを 確かめ合った

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