ヒーロー じゃない

46 side 紫耀 ページ46

監督と長年連れ添った、は
気分悪いけど
的は得てるか

監督もさぞかしやりやすいだろうな


カットで割るより流れで撮影した方が早く終わるのは当たり前だよ。わかってる
カットを割るためにカメラ位置を変えるとスタンバイに時間がかかるのも、わかる

でもさ、カメラ位置変えるより、俺たちに演技と動きで展開していく方が視聴者も感情移入しやすいし観やすいって、
監督が、え？お前らそれ現場で出来るならカット割らなくていんじゃね？
って、気付いたの

アナタのせいだよね


目の前で魚たちを眺めてる大事な女の子
口をバカみたいにあけて
一人だけ水族館を満喫していて 腹立つ



監督が最初にゆうちゃんに説明や相談をするから、必然的に俺たちへの要求も上がってくんだよ

…アナタのせいだよね





「……覚えてろよ」

家では口付ける耳元で 低く囁く

わかりやすく反応した俺の可愛くて愛しい耳が、真っ赤に染まっていく
口を引き締めて、冷静になろうとしてる姿に
めちゃくちゃにしてやりたい欲が芽生える


のぞ美ちゃんが少し離れた場所で顕多くんと同じ魚たちを眺めてるのを確認して



「そんなに毎日、怒られたいの？」

「っ、」


仕事中では出さない、
家で追い詰める時にだけ出す声で 甘く 囁く



…ぁ
ヤバい


引き結んだ口元から、欲を飲み込むように動いた喉が見えて

その首筋に 噛んで 口付けたい

一緒に住みだしてから一度も許されていないキスマークを付けたくなってくる

触れそうな手も、俺の腰に巻き付けたくて
素を見せそうにない別人メイクも
早く落としてほしくて

もっと、って
俺だけが聞ける可愛い声で強請ってよ

俺の声に反応したくせに、目の前の魚たちを見てるのも気に入らないな



少し照明の落とされた館内で
キラキラ輝く水槽に写った、
俺の大事な女の子に目線を合わせる


ガラスを見つめて

俺がみてるのはアナタだけだと

気付いて 一瞬 瞳が蕩ける






「…その顔…アウト、ね」


同じく蕩けた瞳をした俺と視線がからんで
抱きしめたくなるのは、この子のせい で


「…平野さんのせいじゃないですか…」



ぁあ…
空き時間に水族館デート出来んじゃね？って
思った今朝の俺に忠告してやりたい


結局、大事な女の子から瞳が離せなくて
デートどころじゃなかった って

そんで今日も早く帰れるから
思う存分吐き出せるよ、って

移行します→←45 side 紫耀

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す