ヒーロー じゃない

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辻さんのモーニングコールで
平野さんが起こしてくれたから
余裕でシャワーと用意が出来た


だからちょっとだけリビングでまったりしながら辻さんを待っていたら


「ゆうちゃん、今日は何時終わり？」

シャワーから上がって服を着た平野さんの髪がまだ乾ききってなくて
ドライヤーを持ってこようと、すれ違った時に通せんぼされた

真正面から私の背中で組んだ手に囲われて
迷ってる私の手を平野さんの腕に落ち着けた


「昨日と同じ位ですかね〜」



甘い雰囲気をスルーしようとして
軽い声を出したけど、見逃してはくれず

身体に隙間を保って屈んだ平野さんが
耳元を何度か唇でくすぐりながら


「……夜、来てもいい？」

「っ！………」



もぅやだ 甘すぎる
この感じ
タガが外れそうになる



私の耳で遊んでる平野さんの頬を両手で覆って、唇を重ねる
少し空いていた隙間に舌を伸ばすと、すぐに口をあけて 絡め取られる
身体の隙間は埋まって 背中の手が
グッと強くなるのが嬉しくて


頭の中が上手く考えられないけど
起きてからずっと思ってた事


「…身体…めっちゃギシギシする…」

「…………」

「優しさ多めでお願いします」

「……しばらくは無理です…」




見つめ合いながら 時々口付けながら
クスクスと笑うけど口元はニヤけっぱなしで

辻さんからの到着の電話で、別々に出るために玄関から見送る

靴を履いた平野さんが

「じゃぁ…夜…あ、連絡先…」


言いかけた言葉は聞かなかった事にして
ポケットから取り出したモノを
平野さんの手に乗せて包み込む


「……浮かれるのが落ち着くまで、連絡先は知らない方が仕事に集中できそうなんで…私、家に居ても鍵掛けてるんで、今夜はコレで入ってきて貰えませんか？」


握った素材と形で、合鍵だとわかったのか




「…俺コレ、今夜来ても返さないでいい？」



良かった
重たく思われなかった

昨日の今日で渡すのもどうかと思ったけど
連絡先を聞くと、携帯が気になって仕方ないだろうし
帰宅時間が読めないから、待つ時間も勿体なさそう

って そんなんじゃなくて
何も気にしないで来て欲しいから




「……帰りに花屋さん寄ってきます…ね」



平野さんだけに渡す 赤い薔薇三本



「欲しいけど、無くてもいいから早く帰って来て…俺も早く帰れるように頑張るから」



ダメだ
舞い上がってしまう

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