ヒーロー じゃない

30 side 紫耀 ページ30

近くで携帯が鳴ってる
自分の右側が動かない

頭は覚醒してるのに瞼は中々開かなくて
息を吸い込んだ時に、ゆうちゃんの香りが
また微睡みへと誘う


俺の腕に預けてるゆうちゃんを俺に向けて
おでこに口付ける

「ゆうちゃん…起きよー」

「……んー…」


寝言のような、返事のような声が
また 堪らなくて

きゅ、っと抱きしめたついでに
つつつ…と身体のラインをなぞる

「むー…」


あ、怒ってんのかな
ヤバい、寝ぼけてんのが可愛すぎる
また鳴り出した携帯を、無視したいけど

…コレゆうちゃんの方って事は辻さんだ


「ゆうちゃん携帯鳴ってるよ〜…無視して、も一回スる？」


耳元でしっかり目に声を出したつもりだけど
掠れて上手く言えねぇな

数時間前までしっかり弄った身体を
同じように明確に意志をもってなぞる

痕を付けないように
顎から首筋にちゅ、ちゅ、と音を響かせて
散々柔らかくして俺の指が沈んだ胸から
心臓の音がゆっくり
だんだん覚醒して俺と同じ速さで鼓動を刻むのを確認して


「電話に出る？それか、も一回シよっか」


「…………もー…むり」


まだ半分寝ぼけてるゆうちゃんに
軽く口付けて


「おはよ。携帯二回目鳴ってるよ」

「んー…」


睡眠時間があんま無かったからノロノロ動くのか、それとも普段から寝起きが悪いのか…

……そういや、ゆうちゃんいつもスッピンで現場に来てんな
寝起き悪いのか


込み上げてくる嬉しさに、ニヤける顔を隠す気もおこらない
枕元の携帯に手を伸ばして、うつ伏せになったゆうちゃんの項に口付ける

「っん、…平野さん」

「平野さん呼びに戻ってんな」


昨夜、ゆうちゃんの頭の中が訳分からなくなった頃にやっと 紫耀、って呼ばせる事に成功した

呼ばせるのに時間かかったのにもう戻ってる

咎めるように耳を噛んで、身体が思い出す様に上にのしかかって 手を這わす


「ん…辻さん…電話……する…から」


起きる気が感じられないゆうちゃんを
抱き起こして膝の上に横向きに座らせる

離れ難いけど
これ以上はマジで止まれないから
俺の肌と馴染んだゆうちゃんの身体を抱き寄せて
一瞬だけ深く口付けて、舌で咥内から起こす


「ん。用意しよっか」


朝から上がった息と、真っ赤になった頬と

「…も〜…」


鳴きすぎて掠れた声が
数時間前までの行為を思い起こさせる

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