ヒーロー じゃない

24 ページ24

地獄のレッスンと
道場から急いで帰宅して
彗くんに伝えてもらった時間に
まだ余裕があるから
汗だくでボロボロの身体で慌てながら
お風呂に入った
急げ、急げ、と支度しながら
部屋をちょっと片付けながら
化粧は間に合わず


インターホンが 鳴った



身体が硬直して
なんか、泣きそうになってきて


震える足で、深呼吸して 玄関に向かった








平野さんが玄関に入ってきた時
私は服こそ外出用を着てるけど、スッピンで
でも、向かい立つ人はそのままスタジオにでも居そうに隙が無くて

薔薇の花を向けられた時
あまりの完璧な姿の平野さんに
自分との立場を思い知らされた気がして

思考が止まる



「赤いバラ三本の意味、知ってますか？」



……意味…？
あ、本数で意味があるってやつかな
あ、色でも意味が違うんだっけ
……なんだっけ…



薔薇の花から平野さんに視線を向けると
少し眉間に皺を寄せて、苦しそうに














「…愛の、告白」















聞きたい事、あったのに
言いたいこと、あったのに

頭が空っぽになって




「好きだ、とかは仕事で使う言葉だから、あんま意味が無いと思って…」


困った様に笑うから
ぁあ、そんな顔させるつもりはなかったのに
なんて
私自身どうしたいのか決まってなかったのに



「俺たちは、イロイロ制約があるじゃない？それでも、俺はゆうちゃんの勝手に居なくなる行動に文句言いたいし……もぅ、離れるのはキツい。ゆうちゃんは俺の事どう想って…いますか？」



どぅ、って










そんなの


「平野さんが抱きしめる女の子は、私だけだといいなって…思って…」





「じゃぁ……俺の、ゆうちゃんだけに渡す
愛の告白 を受け取って、貰えませんか？」


私の胸の前まで差し出された
三本の赤い薔薇


愛 の 告白 なら、私だって



「私も用意したら受け取ってくれますか？」




ぐしゃっと表情を歪ませて

深く呼吸して

グッと 詰まった平野さんの声が




「俺だけにだと…覚悟して用意して下さい」



お互いだけに





いろんな感情が溢れてきて

今、この目の前の赤い薔薇が滲んできて

両手でしっかり 受け取って


「平野さん、だけに、絶対、用意っします」

流れて止まらない涙で
言葉が上手く出てこない

それでも

ふぅっと、息を吐きながら
抱き寄せてくれた

25 side 紫耀→←23 side 紫耀

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す