【東京喰種】ないから喰われて続く (ページ9)

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第8話ページ9

それは、ほんの一瞬だった。
両親が目の前で喰われた。

久し振りに家族全員で出かけた。
近くのデパートへ買い物。
桃色の可愛いシュシュを買ってもらい、レストランでオムライスを食べた。
デパートから出て、また来ようねって話そうと思って顔を上げた。
その瞬間を狙ったかのように。

父の首が切り落とされた。

断面から吹き出た血が地面を、服を、そして私の顔をぬらした。
何が起こったのかわからなかった。

「キャアアアアアア！！」

姉が悲鳴を上げ、私を守るように抱き締めた。
母が何か叫んだ。
周りにいた人が吐いた。

気付いたら、両親はいなくなっていた。
たった一人の喰種に命を喰われたのだ。
道に転がる両親だったモノ。
それが厳しくも優しかった母と父だとは思えなかった。

「パパ、ママ？」

呟いた声に、答えてくれる二人はもういない。

姉はもう社会人として自立していたので、二人暮らしをすることになった。
恋愛とかオシャレとかに興味があったろうに。
姉は嫌な顔一つせず、私を育ててくれた。

私は暇さえあれば公園へ行き、アヤトくんと遊んでいた。
初対面の時はオドオドしていたアヤトくんだったが、何回か遊ぶと仲良くなった。
たまに彼の姉であるトーカちゃんとも遊んだりした。

「ねぇ、ユーコちゃんのお母さんとお父さんって、なにしているの？」
「……喰種にやられちゃった」

そう言うと、アヤトくんとトーカちゃんはとても驚いた顔をした。

「パパとママが喰種をたくさん倒していたから、敵討ちにきたのかもしれない」
「ユーコの両親って捜査官なの！？」
「うん」

途端に、トーカちゃんの顔が青くなった。
勢いよく立ち上がり、アヤトくんの手を引く。

「ちょ、ちょっと私達用事あるんだった！またね」
「え、待ってよー」

すたこらさっさと二人は公園を出て行った。
それから二人は公園に来なかった。

そしてしばらくして、姉も喰われた。