【東京喰種】ないから喰われて続く (ページ6)

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第5話ページ6

本部までの道を走る。
そんなに体力がないから、息も絶え絶えだ。
物陰に身を隠し、息を整える。

一緒に移動していた女性捜査官は喰種の奇襲から私を庇い、絶命した。
アカデミーで習った、医療班を守るという責任を果たしていた。
どうせ戦うなら、実戦経験のない私の命の方が軽いはずでしょ。
判断する暇がないくらいの奇襲だったから、だけど。

すると、小さい音がした気がした。
物音を立てないように、音がしたと思われる方向に目を向ける。
そこには人影があった。
膝をついている。
じっと目を凝らす。
それはマントをはおり、仮面を付けていた。

……喰種だ。

私は気付かれないように、辺りを見回した。
周りに身を隠せそうな障害物はない。
それなら安心だ。
一人でつっこんで、そこを隠れていた複数の喰種に攻撃される心配がない。
喰種には一対一で挑まないと、人間の身体能力では確実に負ける。
それをわかって喰種は集団でいる時がある。
多分あの喰種は仲間が全員、捜査官に倒されたりしたのだろう。
負傷したところを、命からがら逃げてきたのかもしれない。
だから一人。

いずれにせよ。

「バーカ」

君の命は私に喰われる。

その喰種が気付く前に、私は攻撃を放った。
ドサリと倒れこむ喰種。
近くに喰種がいないか確認した私は、この先にある本部へ向かうため駆け出した。

倒した喰種の横を通る時、チラリとそいつを見た。
それは女性の喰種だった。
それも女性というより少女と言ったほうがしっくりくるくらいの。

かわいそうに。
喰種なんかに生まれなければ、明るい未来があっただろうに。
私にも明るい未来なんてないのだろうけれど。

喰種だと判断されたやつに対し、個人を守る法律は適用されない。
人間にとって害である奴等は我等人間に狩られて当然なのだ。
だから、彼女がまだ赤ん坊だろうが大人だろうが、私は彼女の命を喰らう。
生かしてはおけないのだから。
どうせなら、こんな曇天じゃない空がよかったね。