【東京喰種】ないから喰われて続く (ページ5)

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第4話ページ5

目の前で人のからだが真っ二つにされた。
一番近い位置に立っていた私に、血が降りかかる。
すごい出血量だ、と思った。
呆然と、そう思うだけだった。

「うわぁぁっ！」
「あ、青柳さんがやられた！」

我に返った捜査官の方達は、医療班の私達を囲むように戦闘体勢に入る。
医療班につく捜査官はベテランの方を中心としているから、すぐに何人かの喰種が倒された。
しかし、それまでに何人もが負傷している。

前方に、加勢しに来る喰種が見えた。
捜査官や他の医療班の先輩らは気付いていない。
私は戦死した青柳さんのクインケを手に取った。
羽赫のクインケだから、長距離には持ってこいだ。
先輩達の影に隠れながら、攻撃する。
それは喰種に直撃し、彼等は倒れた。

「なに！？」

捜査官の方達が応戦していた喰種達に動揺が走る。
その隙を見逃さず、捜査官の方達は喰種を倒した。

肩で息をする私達。
一緒に待機していた医療班の先輩が、今の戦闘で負傷した捜査官の治療を始めた。
私も手伝おうとしたけれど、女性の捜査官の人に制止されてしまった。

「貴方は私と一緒に本部へ向かいましょう。私は尾赫のクインケだから。このバランス力で遠距離に特化した羽赫をある程度カバーできるわ。この中で負傷していないのは私と貴方だけだし」
「そうだね、桃野はアカデミー時代主席だったから、今は前線維持に貢献した方がいい」

先輩からも推された。
イコール、私の命は綱渡り状態になるわけか。
前線維持なんてそんなもんだろう。
足が震え、青柳さんのクインケを握る手に力が入る。
しかしここで拒否できる程、私の命は重くないのだ。

「帰って来たら、有給もらえますかね？」
「死亡フラグ立てんじゃねーよ」

笑顔で先輩にそう言うと、ひきつった笑みで返された。
きっと私も上手く笑えていないだろう。
視界の隅でさっきの女性捜査官がトランシーバーで連絡を取っていた。

「白崎、医療班桃野優子を連れて本部へ向かいます」

どうやら私が前線へ行くことは決定しているようだ。
まいったなぁ……
空を仰ぐも、やはり星は見えない。

「感情なんて捨てちまえ」

ボソリと呟いた。