【東京喰種】ないから喰われて続く (ページ19)

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第17話ページ19

手にしていたクインケが地面に落ちた。

「アヤトくん……なんで」

記憶のページをめくり続ける。
何年も昔の事だけれど、私は彼をしっかりと覚えていた。
綺麗な髪と瞳。
整った顔立ち。
よく通る声。
最後に会った時からさらに成長して大人っぽくなっているけれど、忘れるはずがない。

目の前にいるのは、アヤトくん？
それとも喰種？

「嘘だよね」

嘘じゃない。
だって、私を赫子で攻撃してきたじゃん。

「ああ」

それは肯定？否定？

彼の顔の表情が髪に隠れて見えない。

「俺は、喰種だ」

瞬間、腹部に衝撃が走った。
殴られたと理解するのに、時間はかからなかった。

アヤトくんはぶっ飛ぶ私に急接近し、姿勢を低くした。
吐き出した血が彼の頬にかかる。
赤と黒の目をした彼は楽しそうに笑っている。
私は倒れるのをこらえ、必死に足を踏ん張った。
佐倉さんとの特訓以来の痛さに涙が出そうになる。
相手に弱みを見せないよう、ニヤリと笑った。

「なかなかやるじゃねーか」

ふ、と息をつく。
転がっていたクインケをつかみ、彼に攻撃する。

どうやら私はまだまだ弱いようだ。
相手が知り合いというだけで感情を消すことができていない。
そしてなにより、この戦いを楽しいと感じてしまっている。

こんな気持ち、久し振りだ。
お姉ちゃんがなくなってから、楽しく誰かと対戦なんてしていなかった。

最後は私の得意分野で決めてしまおう。
精神を集中させ、相手の動き全員を見る。
そして見つけた僅かな隙。

そこを目掛けて……！