【東京喰種】ないから喰われて続く (ページ16)

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第15話ページ16

目が覚めると、真っ先にうつったのは白い天井だった。
……なんていう、物語みたいな展開を現実で体験したのは初めてだ。
そりゃ、普通の人よりは濃い人生だったけどね。

あの夜、私を助けてくれたのはCCGの医療班の人らしい。
さすが医療班。
喰種を倒し、気絶していた私の傷も治してくれた。
その人の腕の良さに感心する。
喰われた腕は、そこまで痛くない。

日常生活に支障はないものの、しばらく入院することになった。
その期間中、友達や学校、孤児院の先生が見舞いに来てくれた。
今日も暇なので本を読んでいると、病室のドアがノックされた。
返事をして入るように言う。
ガラリと開いたドア。

そこにいたのは、知らない男性だった。

「お、随分と元気じゃねーか」

驚いて絶句する私なんて見えていないのか、その人はものっすごくフレンドリーに入ってきた。
とても若い。
大学生だろうか？
ていうか、こんな人知り合いにいないぞ。
人違いじゃないのかな。

「あの……誰ですか？」
「佐倉でーす」

そうじゃねぇよ！
名前も知りたかったけれど、そうじゃない！
何者かを聞いているんだ！

イラッとしたのがわかったのか、その人はおかしそうに笑った。

「あー、CCG医療班の佐倉だ。あの夜、お前を助けて喰種を倒した」
「え……えええええ！？」

わっか！
めっちゃ若い！
こんなに若い人が！？

目をこれでもか！というくらい見開いた。

「あ、ありがとうございます」
「いーっていーって。それよりも就職志望なんだろ？大切な時期に災難だったな」

ドクン。
就職という言葉を聞いた瞬間、私の中の時間が止まった。

目が覚めた時から考えていたことがある。
喰種には、本当にいい人と悪い人がいるのだろうか？
だって、まだ小学生の兄弟を襲っていた。
あの二人の恐怖に染まった瞳は忘れない。
まだ幼い喰種が駆逐されるのは反対だった。
でも、それは人間だって同じだ。

「……あの」
「ん？」

どこからか本を取り出して読んでいる佐倉さん(居座るつもりだったのかよ！)に声を掛けた。

「医療班は、今から志望しても間に合いますか？」

そう問い掛けた私に、彼はニヤリと怪しく笑った。

「その言葉を待っていた」