【東京喰種】ないから喰われて続く (ページ15)

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第14話ページ15

足が震える。
逃げ出したい逃げ出したい。
捜査官の人は、こんな恐怖の中に身をおき、市民の命を守っているのか。
ここで終わりなんていやだ。
きっと私にこれからの命はない。
生きるには、逃げ出すしかない。

でも、ここで逃げたら兄弟が喰われる。
何のために私はここにいるんだ！
彼等の命を助けるためだろう！

「逃げて！はやく！」

私が叫ぶと、座り込んでいた弟の方が弱々しく立ち上がった。
兄の方は弟をしっかりと立たせると、持っていたバットを私に向かって投げる。
それを受け取った。

「ありがとうございます！」

足音が遠ざかる。
完全に一人になった。
ここで私が踏ん張らないと、この喰種はきっとすぐにあの兄弟のところへ向かうだろう。
証拠をなくすためだ。

「あのガキは逃がしちまったが……お前の方がうまそうだな」
「うっせ！」

ペロ、と舌なめずりをする喰種。
そのしぐさに背筋がこおる。
鮮やかな色をした鱗赫が恐ろしさを倍増させている。

「喰わせろぉっ！！」

赤い目をらんらんと光らせながら、喰種が襲いかかってきた。
攻撃をバットで紙一重で受け止める。
剣道をしていたことと、何故かあの兄の方が金属バットを持っていてよかった。

何度も相手の攻撃を受け流し、防いでいるけれど、喰種の身体能力には敵わない。
こっちが完全におされている。

「がっ」

赫子が両肩に直撃した。
これじゃあバットが持てない。
ドサリ、と地面に倒れこんだ。

ちくしょう、こいつ頭いいな。
両腕が使えなくなったら終わりのことを知っていた。

血が流れて、痛くて動けない。

喰種が馬乗りになる。

口を開ける。

かぶりつく。

「ああああああああっ！！」

今まで感じたことのない痛みが走る。
お姉ちゃんも、この痛みを感じて逝ったのだろうか。

くちゃくちゃと咀嚼する音が聞こえる。
本当にここで私の人生は終わりなのか。
つまんねぇ……

痛みと諦めと悔しさと悲しさが入り混じる。
解放されたくて、目を閉じようとした。
その時、視界の端に見えたのは、白いなにか。
それは私を食べていた喰種を吹き飛ばした。

「あ……」

薄れていく視界の中。
私を庇うように立っていたのは、まだ若い男性だった。