【東京喰種】ないから喰われて続く (ページ14)

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第13話ページ14

それからアヤトくんは土手に来なかった。
私も学年が上がるに連れて難しくなる学校の勉強や、剣道の練習などで忙しくなり、土手へ行く回数が激減してしまった。

そして数年。
もうすぐアカデミーに入る、という頃の話だ。
その時期の孤児院の子供達には、三つの道がある。
そのうち一つは普通の大学に進学、または就職し、自立すること。
残りの二つはCCGに入ること。
それは捜査官と医療班に分類される。
また、医療班は医療技術と戦闘能力の二つが必要とされるため、より優秀な人材が必要となる。

私は剣道などで優秀な成績を修め、なおかつ頭もよかったので、医療班になることを推されていた。
しかし私はCCGの喰種ならば子供だろうが老人だろうが駆逐することを不満に思っていたので、CCGに加入することは嫌だった。
だから私は就職を希望していた。

していたのだ。

事件は夜遅く、図書館からの帰りに起きた。

真っ暗闇の新月の夜、私は図書館での勉強を終え、孤児院へ帰ろうとしていた。
すると、近くの公園から悲鳴が聞こえてきた。
急いで駆け寄ると、小学生くらいの子二人が喰種に襲われていた。

「ぐ、喰種！？」

思わず出た声に、一人の小学生が反応した。

ライトで照らされた公園。
兄弟だろうか、兄が弟を守るように前へ出ている。
野球の帰りらしく、バッドを構えている。
それでも彼は、まだ12歳くらいだろう。
大人の喰種を、恐怖に涙を流しながら睨んでいる。
彼は私の存在に気付いていないらしく、勇敢に怒鳴っている。

「こっち来んなよ！お前なんか俺が倒してやる！！」

きっと彼は喰種の身体能力が人間よりはるかに高いことを知っている。
だから逃げられないと悟り、バットを持って戦おうとしているのだろう。
弟を逃がすために。

喰種が下品な笑い声を上げる。
腰の辺りから数本の触手のようなものが出現した。
鱗赫だ。

「喰わせろぉ！」

喰種の赫子が兄に直撃した。
それでも咄嗟に避けたらしく、肩をかすった程度だ。
でも、きっとマグレ。
次は絶命する。

私は歯を食い縛り、地面を蹴った。
ペンケースに入れておいたシャーペンを手に持ち、背後から喰種に接近して突き刺す。
しかし、シャーペンは折れて使い物にならなくなった。

「わすれてた……」

喰種に刃物は効かない！

喰種が標的を私に変えたようで、ニヤリと笑った。
やばい、これで終わりかも。
でも負けちゃいけない。
涙をこらえて立ち続けた。