【東京喰種】ないから喰われて続く (ページ11)

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第10話ページ11

CCGの孤児院では、だいたいの子が捜査官になるべく武道などに励んでいる。
私は部活で剣道をしていたので、とりあえず剣道をそこでやっていた。
中学から始めた初心者だったが、センスがあったらしく、センス＋厳しい練習でかなり強くなった。
上級生でいた最強の双子の先輩と互角に戦えるくらいには。
こんな感じで、心にポッカリと穴はあいていたものの、それなりに充実した日々をおくっていた。

ある日のこと。
課外である剣道が休みだったので、近くの川へ遊びに行った。
遊ぶって言っても、芝生に座って静かに過ごすだけだけれど。
それでもキラキラと太陽の光を反射させて輝く川や、頬をなでる風が好きだったから、私は暇さえあればそこへ行っていた。

その日は私しかいなくて、とても静かだった。
ボーっと座っていると強い風が吹いて、ゆるく髪を結っていたシュシュが飛んでしまった。
それは母からもらった大切なものだったので、私は急いで立ち上がり、取りに行こうとした。
数メートル先へ地面に落ちたシュシュ。
そこへ駆け寄ろうとしたとき、クシャリと小さい音がした。

「……あ」

なんとなんと、近くを歩いていた男の人が私のシュシュを踏んでしまったのである。
固まる私と、踏んだものに気付いて足をあげる目の前の人。
彼は茶色く汚れてしまったシュシュをつまみあげた。

「あの……それ私のです」
「ああ？」

声がまだ高くて、同い年くらいかなーと思った。
なんか不良っぽい返しだったけれど。

おずおずと上目使いで彼を見上げた。
よりによって不良に踏まれたよ……
怖かったけれど、シュシュは大事なものなので勇気を出して彼の顔を見た。

「え……」

藍色に近い綺麗な髪と、同じ色の瞳。
整った顔立ち。
背が伸びて目つきが鋭くなったけれど、彼は。

「アヤトくん」

アヤトくんは目を見開いて私を見た。

風が私達の間を吹きぬけた。