同じ穴のムジナ:gr ページ6
パソコンをずっと弄ってる幼馴染みを尻目に、私はずっと、つまらないテレビをぼんやり眺めてた
別に恋仲という訳でもないが、たまにこうやって家に遊びに来ては、なんでもない時間を溶かすように過ごす
かたかた、と響く音。幼馴染みと時間を潰す方が、友達といるより落ち着くのだ
空はもうじき暗闇へ。深海に沈んでいくように、ゆっくりゆっくり日が暮れる
ニュースでは、事故で女性が轢かれた、だとか。そんものばかり。
それに一体何の意味があるのか。名前も知らなければ、顔も知らない人が死んだ。なんて、何の意味もない事だと思う。
人に話せば嫌悪の眼差しで見られるであろう考えをしているときに、ふと、疑問が生まれた
彼は、私が死んだら悲しんでくれるだろうか。
いや、わからない。もしかしたら大号泣してくれるかもしれない。もしくはなにも、思ってくれないか
聞いてみたい気もしたが、知らなくていいことに思えてきた。知らぬは一瞬の恥じ、知るは一生の恥じ、ってね
いずれ私が死んだらわかることだ。墓の中で、ぐるちゃんがどういう反応をするか、楽しみになってきた。自分が死んだ後の幼馴染みの反応を楽しむなんて、中々イカれてるけど
くだらない妄想をしていれば、ニュースはとっくのとうに終わって、ドラマが始まっていた
空には星と、欠けてる月が静かに町を照らしていた。もういい時間だ
「そろそろ、あたしは帰るよ。邪魔したね」
「お前ただテレビ見てただけだろ。」
「まあね。じゃあ、また今度来るよ」
玄関まで行って、ヒールに足を通す
あの低音で、耳に響く声が廊下を伝って、足元へ
「Aさぁ、」
「ん？」
「わしといて、楽しいんか？」
「楽しくなかったら、来るわけないでしょう」
がちゃりと、少し重たいドアをあける
「またね。おやすみ」
「おん、気を付けてな」
ばたん、
ドアが閉められた。と同時に泡のように消えていく集中力
「あ"〜…」
ずるり、と椅子から落ちそうになる
彼女がいるときはものすごい集中できるのに、彼女が帰ったとたんなにもできなくなる
飯を食う気力もない
動画編集は、また明日やろう。とんちに怒られるだろうが、今日はもうなにもできない。
いつもこうだ。結局、彼女がいないとなにも、できやしない
たまに、ふと、彼女がいなくなったら、と考えるときがある
考えるだけで恐ろしい。いつか来るであろう、未来
「Aが死んだら、せやなぁ。わしも、死のうか。」
小さく、響いた声
終わり
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作者名：ちあきのこ | 作成日時：2017年3月1日 22時
