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第九話 ページ10
「着いたわよ。さっ、入って入って」
かつての我が家に客として招き入れられる。なんだか不思議な感覚だ。
私は周りを見渡しつつ、家にあがる。
懐かしさに目を細めているとバスタオルと一緒に洋服を渡されて、着替えてこいと脱衣所に押し込まれる。
シャツとベストにスカート。首元にはリボン。こんな服持ってたんだ、なんて思いながら袖を通した。
自分の汚れた服は別の防水加工がされた袋に入れてから、もう一度持ってきた袋に入れる。この袋の容量は見た目以上に大きい。……いや、比喩ではなく本当にそうなのだ。魔道具の一種だから。
「……あの……」
「わぁ！似合ってるわ！ステフが大きくなったら着せようと思って取っておいたけど、正解だったわね……！正直、こんな時に役に立つなんて思わなかったけれど」
母はとても楽しそうだ。
幼い私の未来で着せたかったようだが、実質叶っているようなものだ。
それを母が知る方法はないのだけど。
「……ありがとう、ございます」
「ところで、貴方お名前は？」
「……メアリー。メアリー・スー」
メアリー・スーというのは、正確な定義が決められているわけではないが恣意的なレッテル、中傷として使われているもので、原作を改悪したり、ご都合展開に活躍する主人公のことを言うそうだ。
そこから転じて、過去を変え物語を変えていく私は、メアリー・スーと名乗ることにした。
「へぇ、よろしくねメアリー！私はエリザベスよ」
「……よろしくお願いします、エリザベスさん」
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