後悔は時間とともに 01(乙) ページ33
ｰｰｰｰ
久しぶりにみた彼女は、それはそれは
綺麗だった。
｢おついちさん、久しぶり｣
｢うん、久しぶりだね。元気だった？｣
そんなたわいもない話。
いや、当たり障りのない話と言った方がいいだろうか。
俺はなるべく彼女のプライベートが
感じられないような会話を選んだ。
今彼女がどこで、誰と、何をしているかなんて
わからない。
別れてから5年も経つのか。
そうぼんやりと考えた。
記憶の中の彼女はまだ可愛らしさが残っていて
やんちゃな一面もあった。
だけど今目の前にいる彼女は
すっかり大人の女性だ。
｢おついちさんは･･･今どうしてるんですか？｣
｢･･･今？相変わらずだよ。動画撮ったり
編集したり、アップしたり｣
｢そうなんですね。私、転職したんですよ｣
彼女がポツリと呟く。
｢そうなんだ、今は何の仕事やってるの？｣
自然な会話の流れ。
気まずさはあまり感じられない。
こうやって二人で話すのは何年ぶりだろう。
最後に彼女と話した時は喧嘩だった。
今考えれば馬鹿だと思う。
ずっとそばに居てくれたことを
ありがたく思うこともなく自分勝手に振舞っていた。
そんな俺の身勝手さに
飽き飽きした彼女から告げられた別れ話。
当時の俺は別れ話を切り出されたことが理解出来ず
感情的になって彼女に詰め寄った。
その時の彼女の悲しそうな顔をよく覚えている。
｢新しい仕事は大変だけどやりがいもあるし
楽しいですよ｣
目の前の彼女は楽しそうに笑う。
彼女の笑顔を見た瞬間、胸が締め付けられた。
今なら。
今ならもっと大切にしてあげられるはずだ。
もっと彼女のことを思った振る舞いができるはずだ。
だけどもう遅い。
俺たちは･･････
もう終わったんだ。
｢おついちさん･･･？｣
彼女に声をかけられてハッとした。
心配そうに覗き込むその表情。
徹夜での編集が続いた時に
よく彼女が浮かべていた顔だ。
｢A･･･俺、･･･｣
｢ん？｣
謝りたい。
あの時、大切に出来なかったこと。
ずっと俺のことを気にかけてくれていた彼女を
無下にしたこと。
いっぱい謝りたいことがある、伝えたいことがある。
彼女は俺が言葉を切り出すのを待ってくれている。
いつもそうだった。
俺の話をいつも笑って、楽しそうに聞いてくれてた。
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作者名：そすんさー | 作成日時：2018年4月21日 2時
