【無題】06 (ページ9)

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そんな気持ちを抱いて今日もAと電話をした。

『おついちさん、最近元気ない？』

『そうかな、そんな感じする？』

『･･･あんまり楽しそうじゃないなって』

そりゃそうだよ。
Aと何ヶ月も会ってないんだから。

楽しいわけがない。

『疲れてそうだし、
･･･電話する回数減らそうかな、なんて･･･』

『えっ、』

ちょっと待って。
何言ってるのこの子は本当にもう。

『待ってA。電話の回数減らされたら
俺もっと元気なくなりますけど？』

『でも･･･』

Aとは長い付き合いだ。

すれ違ったり喧嘩だってしてきた。
だからこそ、Aがなぜ
この考えに至ったかもわかる。

『A、俺はさ。すごくAのこと好きなの。
だから話せないと元気なくなっちゃうし
そもそも会えないってだけでもすごいダメージ。』

『うん･･･』

『年甲斐もなくわがままを言うなら
”話したいことよりもなによりもただ逢うために逢いたい”
そんな気持ちだよ』

伝わってる？俺の想い。

電話の向こうでAが笑った気がした。

『なんだか詩人みたいだね』

『詩人ではないんだけどね』

そう言って笑いあった。

｢あーちょっと遅くなったかな･･･｣

飲んだ帰り、寒さも和らぎ始めた夜風を感じながら
家へと足を向ける。

Aには飲みに行くから
電話は明日にしようと事前に連絡しておいた。

今日話せないのが寂しいけど、
夜遅くまで待たせるわけにもいかないし。

そんなことを考えてエレベーターを降りた先。

部屋のドアの前に見慣れた姿を見つけた。

『え･･････A･･･？』

なんで？
どうしてここに？

疑問が浮かびすぎて言葉にならない。

Aはニッコリと照れくさそうに笑って口を開いた。

｢”ただ逢うために逢いたい”、そう思ったから
会いに来たよ、おついちさん｣

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