【ホワイトデー】01(乙) ページ5
ｰｰｰｰ
『もう閉店ってことはあがりだよね？
向かいのカフェで待ってるから。
また後でね』
あの後からご飯に行ったり映画に行ったり
何度か会う機会があった。
そして昨日、おついちさんから
『明日の夜空けておいて』と連絡が来た。
特に予定もない私はすぐに返事をして、
そして約束の今日。
ホワイトデーってこともあって
朝からお店は忙しかった。
バレンタインの時ほどじゃないけど
ショーケースのチョコや
ホワイトデー用のお菓子はどんどん売り切れていく。
閉店間際、バレンタインの日と同じ時間に
おついちさんが店に顔を出した。
｢いらっしゃいませ｣
｢こんばんは、Aちゃん。
閉店間際で申し訳ないんだけど
見繕ってくれる？｣
｢はい、でももう結構売り切れてしまって･･･｣
｢じゃあ、この中でAちゃんのおすすめは？｣
もう残り少ないお菓子を見る。
｢これ、私すごく好きです｣
ショーケースから取り出したのは
クッサン・ド・リヨン。
チョコレートガナッシュとマジパンが
上品な味のコンフィズリー。
｢綺麗な色。可愛いしAにピッタリだね。
じゃあ、これプレゼント用で｣
｢？･･･はい、リボンは･･･緑ですよね？｣
｢うん、よく覚えてるね。いい子｣
ニッコリと笑ったおついちさんに
思わずドキリと胸が鳴った。
｢ありがとう、向かいのカフェで待ってるから｣
そう言いながら軽く手を振って
お店を出ていくおついちさん。
相変わらず今日もスマートだなぁ。
｢おついちさん、お待たせしました｣
｢大丈夫だよ、お疲れ様。場所移動しようか｣
｢はい｣
連れて行ってくれたのはオシャレなお店。
あんまり来ないからちょっと緊張しちゃうな。
料理もお酒も美味しいし、雰囲気もいい。
食べ終わったくらいでおついちさんが
さっき私が見繕った
クッサン・ド・リヨンを差し出す。
｢あの、これ･･･｣
｢Aちゃんに。今日はホワイトデーだから｣
｢そんな、私からは何にも･･･｣
｢そんなことないよ。それからこれも。｣
さらにもうひとつ。
｢これって･･･｣
有名なフランスのお店。
日本には数店舗しかなくていつも行列ができている。
｢Aちゃんに似合うと思って。
どうかな、俺の気持ちと一緒に受け取ってくれない？｣
中には綺麗なピンク色のイスパパン。
おついちさんの真剣な表情にプレゼントの意味に気づく。
私は小さく頷きながらプレゼントを受け取った。
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作者名：そすんさー | 作成日時：2018年3月12日 0時
