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私のお客さん 01(兄) ページ28

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「髪伸びましたね、今日もいつもの感じでいいですか?」

私はスタイリングチェアに座ったお客さんの
首筋にかかる襟足に触れる。

「ん、おまかせで」

「ふふ、いつもそう言われますね」

「このスタイル、気に入ってるから」

そう言って笑うのはお客さんの兄者さん。

初めてうちのサロンに来た時から
ずっと指名してくれているお客さん。


「そうですね、暖かくなってきたし
襟足少し切ってすっきりさせましょうか」

「OK」

「じゃあ先にシャンプーしますね」




シャンプー台に案内していつもみたいに髪を洗う。


「A」

「はい?」

ふと兄者さんが口を開いた。

「なんかいい匂いするけど」

「ふふ、気付きました?
実はヘッドスパ用の美容液使ってるんですよ。
いつもはマッサージだけなんですけど、
お疲れだったみたいなので」

「俺そんなに疲れてるように見えた?」

「いえ、見た目とかじゃなくて髪と質とか、
頭皮の状態を見て」

兄者さんは私の言葉に納得したのか
「ふぅん」と呟いて目を閉じた。


整った顔立ち、スッと通った鼻筋が見える。
初めて来た時、すごく目をひいたのを覚えている。

まさか自分のお客さんになってくれるだなんて
その時は思いもしなかった。





カットが終わって兄者さんはスタイルを確認中。

「どうですか?後ろはこんな感じです」

鏡を向けて襟足を写す。

「うん、いい感じ」

「よかったです!」


満足げに笑う兄者さんに嬉しさがこみ上げる。






「今日はありがとうございました。
兄者さん、すごく素敵です!」

そう言うと兄者さんが微妙な表情を浮かべた。

(え、私変なこと言ったかな・・・)


「セールストーク的なやつなんだろうけど
勘違いするからあんまりそういう事言うなよ」


そう言ってニヒルな笑みを浮かべて
店をあとにした兄者さん。


私がその言葉の意味を知るのはもう少しあとの話。




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設定タグ:2bro , 兄者弟者 , おついち   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:そすんさー | 作成日時:2018年3月12日 0時

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