瞳の中にはあなただけを 01(兄) ページ45
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"じっ・・・"
そんな効果音が聞こえてきそうだ。
Aは俺が話す時、俺の目を見つめてくる。
癖なんだろうけど、ちょっと控えてほしい・・・。
「兄者くん、どうしたの?」
やめてくれ
その顔で首傾げるとか反則だから。
「いや、なんでもない」
「そう?ならいいや」
そんな風に笑わないでくれ
これ以上、好きにさせないでくれ。
Aのことが気になり始めたのは
ゼミで一緒になった時。
その時俺とAは講師に頼まれて二人で
講義の準備をしていた。
ふと視線を上げた時、
目の前でAが髪を耳にかけた。
もう、その男がときめくド定番な仕草に
例に漏れず俺もときめいた。
それからはことある事に
Aを目で追っている俺がいた。
高いところにあるものをとる時の背伸びも
すぐ照れるところも。
でもAには好きな人がいるらしい。
だから俺の気持ちを伝えるつもりもないし、
これ以上好きになるのも不毛だ。
「兄者くん、考え事?」
不思議そうにするAが俺の横に座った。
「ちょっと難しい顔してる。
大丈夫?」
顔を覗きこまれれば思わず体を離してしまった。
「・・・・・・」
しまった。
明らかに俺が距離とったのがバレた。
でもAはなんも言わない。
俺とさりげなく距離をとるA。
突っ込まれないだけ救いだ。
だけどお互い気まずいのにはかわりない。
痺れを切らして口を開いたのは俺。
「俺、帰るわ」
「え、あ・・・兄者くん・・・私・・・っ」
なんだ?どうしたんだ?
「兄者くんのこと・・・・・・、ううん、なんでもない。
またね」
そう言ってAが部屋を出ていった。
横を通り過ぎるAの顔が
赤いような気がした。
「・・・・・・なんなんだよ、ったく・・・」
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作者名:そすんさー | 作成日時:2018年3月12日 0時