【無題】05 (ページ32)

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【仮面はここに置いていく】08(弟) ページ32

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Aちゃんと初めて出かけた日から3ヶ月が経った。

彼女はすっかり懐いてくれて堅苦しさもなくなった。

｢弟者さん、今度水族館に行きませんか？｣

敬語は癖で抜けないんだとか。

相変わらずのスケジュールだけど
週に一回、お出かけの日を作った。

｢いいね水族館。ご飯食べた後、一緒に探そっか｣

｢はい｣

嬉しそうに頷くAちゃん。

部屋に戻ってネットで検索をしていれば
突然携帯が鳴った。

ディスプレイにはAちゃんの母親の名前が。

なんだろう･･･。

｢はい、弟者です｣

｢私、水族館について調べてみたんです。
イルカのショーが見られる所があるみたいですよ｣

楽しみにしてくれているのか
Aちゃんはいつもよりお喋りだ。

だけど俺は･･･

｢･･･弟者さん？どうしたんですか？｣

言わなきゃいけない･･･。

｢Aちゃん、あのね。
週末、ご両親が帰ってくるよ｣

｢･･･！｣

両親が帰ってくるということは
俺の仕事はなくなる。
両親が海外に行っている間という契約なのだ。

｢だから、水族館には行けな｢いやです！｣

俺の言葉を遮るように響いたAちゃんの声。
まるで聞きたくない、とでもいうように。

｢ぁ･･･すみません･･･私･･っ｣

我に返ったのかAちゃんは慌てて頭を下げた。

｢全然いいけどさ。･･･その、
両親が帰ってきたら俺の仕事は終わりだから･･･｣

｢･･････そう、ですよね･･･｣

そう呟いて小さな肩を落とす。

その後のご飯の味を覚えていない。
一言も会話をしないまま食事を終えて
Aちゃんは何も言わず部屋に戻っていった。