私の姓はあなたの姓に 01(兄) ページ21
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「〜さん、○○さん」
「・・・・・・!!あっ、はい!」
どうやら何度も呼ばれてたみたい。
他の人とも目が合ってしまった・・・恥ずかしい。
「大変お待たせいたしました、こちらが・・・」
店員さんの説明を聞きながら、
私は紙面に書かれた苗字に目を落とした。
呼ばれ慣れない苗字。
まだ慣れないから、
さっきみたいに反応できない時が多々ある。
「説明は以上ですが、不明な点はございますか?」
「いえ、大丈夫です。ありがとうございました」
軽く頭を下げてお店を出た。
家の玄関にはまだ慣れない苗字が
書かれたプレートが飾られている。
「ただいまー」
部屋に入れば見慣れた姿が視界に入った。
「おかえり、A」
「兄者さん、私今日も名前呼ばれてるのに
気づかなかったよー・・・」
私の言葉に兄者さんが苦笑する。
「いい加減慣れろよ、ちょっと寂しいだろ」
(あ・・・そっか、そうだよね)
「うん、早く慣れるようにしなきゃね」
そう笑って買ってきたものを棚に片付ける。
ふと、手元に影が落ちた。
振り返る間もなく、
しっかりとした腕に包み込まれた。
「兄者さん?」
「早く慣れてくれないと拗ねるからな」
首元に押し付けられる頭。
髪が当たってくすぐったい。
結婚してまだ一ヶ月弱。
式を挙げて、いろんな手続きをして、
正式に苗字が変わって・・・。
でもまだ変わった苗字に慣れない私がいる。
「もう嫁入りしたじゃん、俺の苗字に変わっただろ?」
「うん、兄者さんに嫁入りしたよ。早く慣れるね」
振り返ればちょっと拗ねた顔が見えた。
クールに見えて案外甘えたがりな兄者さん。
そんな所にも惹かれたんだよな、なんて考えれば
思わず口元が緩んだ。
「何笑ってんだよー・・・」
「ごめんごめん。
やっぱり兄者さんのこと好きだなって。」
そう言って照れる兄者さんの頬にキスをした。
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作者名:そすんさー | 作成日時:2018年2月3日 0時