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「すみません、もう閉店で・・・」
入口にはお昼に来た帽子のお兄さんが。
(あれ?一人だ)
「もしかしてチョコもう売り切れちゃいました?」
「はい、申し訳ないですが・・・」
お兄さんの視線が謝る私の手元に注がれる。
「あっ・・・すみません、これさっき私が買ってしまって・・・
もう閉店のつもりだったので・・・」
さすがにこれを売るわけにはいかない。
でもどうしてお兄さんが
チョコを探しに来たんだろう・・・。
「それってさ」
じっと手元を見ていた視線が上がり目が合う。
「誰かにあげるの?」
思ってもみなかった質問。
まさか自分用ですだなんて、恥ずかしすぎる・・・。
でも最近は、
頑張った自分へのご褒美なんて言葉もあるし・・・
「売れ残ってしまったので、お家で食べようかと」
「そうなんだ・・・じゃあ、ラッピングのリボンは
緑でよろしく」
「え?」
「リボン、緑でお願いします」
ちょっとよくわからない。
何言ってるんだろう、このお兄さん。
状況を理解できないまま
言われた通り緑のリボンでラッピング。
「こんな感じでよろしいでしょうか」
「うん。お代はちゃんと払うからさ、
それ、キミからってことで俺にちょうだい?」
「・・・?」
ますます訳がわからない。
心の声が表情で伝わったのか
お兄さんはニッコリ笑ってラッピングされた袋を指差す。
「キミからのチョコが欲しいんだけどな。
ダメかな?Aちゃん」
「えっ、名前、・・・どうして」
あ、名札か・・・。
「もう閉店ってことはあがりだよね?
向かいのカフェで待ってるから。
また後でね」
返事をする間もなくお兄さんは
軽く手を振ってお店を出ていってしまった。
手を振る姿がなんともスマートだ。
(じゃなくて・・・っ)
まだよく状況がわからないまま
私は緑のリボンがかかった袋を見つめた。
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作者名:そすんさー | 作成日時:2018年2月3日 0時