06 ページ43
ｰｰｰｰ
翌日、外の騒がしさで目が覚めた。
何事かと窓から顔を出せば兄者さんの姿があった。
｢！！？｣
いつもの様に名前を呼ぶことが出来ない。
彼は村の人達に囲まれていたから。
『人を丸呑みにする大蛇』
言い伝えが頭の中に浮かぶ。
その大蛇である彼が村の人達に囲まれている、
とすれば･･･
私は家を飛び出し兄者さんの元へと駆け寄った。
｢兄者さんっ･･･！｣
飛び出してきた私に驚く村の人達。
兄者さんは微かに目を細めて私の腕を掴み
強く引き寄せる。
｢きゃっ･･･！｣
後ろから抱きしめられるような形になり
思わずドキドキと胸が鳴る。
だけど、そんな私とは対照的に
村の人達の顔は青ざめていった。
｢この娘は私のものだ。誰にも触れさせはしない｣
不意に聞こえる兄者さんの声。
いつもみたいな優しい声じゃなくて少し怖い。
ざわめき立つ村人を他所にフワリと兄者さんの髪が
首筋に触れたかと思えば軽い痛み。
歯を立てられたことに気付くのに
時間はかからなかった。
｢そんなっ･･･！｣
｢彼女が、まさか･･･｣
同様が広がる中、
兄者さんは掴んだままの私の腕を引き村を後にした。
背中からは悲しむ声が聞こえる。
見慣れた森を抜け、
兄者さんがいつもいる洞穴に着くまで
一言も会話はない。
洞穴が見え、奥へと入ったところで腕が解放され
兄者さんが申し訳なさそうに私を見た。
｢ごめんな、A。やな思いしたよな･･･｣
｢え･･･｣
｢ケーキのお礼をしようと思って村に近づいたら
あんな事になって･･･
村の人はもうAは助からないと思ってる｣
そうだ、私噛まれたんだ･･･
そのことに気づき首元をおさえた。
｢あ、大丈夫。俺、もう牙はないんだよ。
だから毒もない。
まぁ、そのせいで食べ物には困るけどな｣
｢そうだったんだ･･･｣
あのまま何もしなければ兄者さんは捕まっていたと思う。
そうなれば今みたいにこうやって
話せなかったかもしれない。
そんなの･･･いやだ
｢兄者さん｣
｢A･･･？｣
無意識のうちに兄者さんの手を取り握っていた。
ひんやりとした手、肌の表面を覆う鱗。
明らかに人の肌ではないけど、
そんな事はもう関係ない。
｢兄者さんが無事でよかったです･･･会えなくて
寂しかった･･･もう一緒にケーキ食べられないのかなって｣
｢悪い。不安にさせたな｣
そう言って頭を撫でてくれた兄者さんの表情は
優しかった。
ｰｰｰｰ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 107人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：そすんさー | 作成日時：2018年12月8日 6時
