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今日もケーキの入ったカゴを持って森へ向かう。
カゴの中にはぶどう酒じゃなくてぶどうジュース。
通い慣れた森の道を抜けて、奥へと足を進めれば
洞穴が見えてきた。
｢兄者さーん｣
･･････
(あれ？)
いつもならすぐに姿を現す兄者さんが出てこない。
｢兄者さん？｣
もう一度名前を呼ぶけど、辺りは静まり返ったまま。
私の声だけが洞穴に響いた。
｢兄者、さん･･････？｣
昨日、兄者さんを寝かせたベッドのある所まで
入ってみる。
｢いない･･･｣
誰もいないベッド。
明かりの灯ったままのランタン。
｢お出かけ中かな･･･｣
私は昨日兄者さんが寝ていたベッドに腰をかけ
帰りを待ってみることにした。
･･････
･･･
しばらく待ってみたけど兄者さんが
戻ってくる気配はなく、
私はもう帰ろうと立ち上がった。
｢あ･･･ケーキ･･･｣
せめても、とケーキとぶどうジュースが入った
カゴをベッドサイドに置いて洞穴を出た。
｢会えなかったな･･･｣
毎日会っていたから会えないことが不思議に感じられる。
そんな兄者さんはこの森に住む大蛇。
人を丸呑みにするという言い伝えがある。
怖いという感情は最初の一瞬だけ。
今は･･･
会えないことを寂しく思ってしまう。
｢ただいまー｣
｢おかえり。今日は早かったのね｣
キッチンにいるお母さんが不思議そうにする。
｢うん、友達いなかったんだ｣
｢そうなの。残念だったわね。
･･････そういえばA、あまり森の奥へは
行っちゃダメよ？
あそこには大蛇が住んでいるって言い伝えだから｣
その言葉に一瞬ドキリとする。
｢う、うん･･･大丈夫だよ｣
もしかして･･･誰かに･･･
ふと、そんな不安が頭を過り私の心がざわついた。
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作者名：そすんさー | 作成日時：2018年12月8日 6時
